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短期経済予測 (2023年4-6月期~2025年1-3月期)

第194回<速報>米欧の金融不安も、景気回復続く

―米欧の根強い物価高が招く金融不安の拡大に注意

 

2023/05/17

日本経済研究センターは、最近の金融経済情勢と5月17日に内閣府が公表した2023年1~3月期のGDP速報(1次速報値)を踏まえて、「第194回四半期経済予測」(以下、SA194)を取りまとめ、2023年3月時点の前回予測(以下、SA193R)を改訂した。

  • SA194では、米欧での金融不安の影響も限定的なものにとどまり、海外経済が堅調に推移する中で、わが国の景気は回復を続けると予測した。すなわち、実質GDP成長率は、2023年度が前年比+0.9%、2024年度は同+1.3%と、ゼロ%台前半とみられる潜在成長率を上回って推移すると予測した(SA193R:2023年度同+0.9%、2024年度同+1.0%)。物価見通しについては、企業による家計への価格転嫁の動きが今後も続くとみられることから、消費者物価(生鮮食品を除く総合)の前年比を2023年度+2.7%、2024年度+2.4%とSA193R(2023年度:同+2.3%、2024年度:同+1.9%)から0.5%ポイント程度、上方修正した。
  • 海外経済の実質GDP成長率は、SA193R と同様、2023年が前年比+2.4%、2024年は同+2.9%と予測した。米欧経済は、米地銀の相次ぐ破綻などの金融不安が銀行の貸出姿勢の慎重化を通じて実体経済に波及するとみられるが、その影響は限定的なものにとどまり、プラス成長を維持すると見込んでいる。中国は、経済再開後に回復の続くサービス消費が景気をけん引するとみている。
  • こうしたもとで、わが国の経済見通しについて、輸出は、財輸出が低迷する中でも、インバウンド需要の強さを背景にサービス輸出が大きく増加することから、底堅く推移するとみている。設備投資は、高水準の株価が示唆する有望な投資機会(トービンのQ)見合いで妥当な水準になるよう、着実に増加していくと見込んでいる。また、個人消費は、1990年代前半以来となる高いベースアップを通じて雇用者所得がしっかりと増加する中で、増加基調をたどると予想している。なお、このところ交易条件の悪化が景気を下押ししていたが、今後は交易条件の改善が企業収益を下支えすることで景気を押し上げるとみている。また、物価見通しについては、賃金上昇がサービス価格の引き上げにつながる中で、消費者物価(生鮮食品を除く総合)の前年比が+2%台で概ね推移すると予測した。
  • ベースラインのシナリオとして、わが国の景気は回復を続けるとみているものの、不確実性は高く、景気下振れのリスクが大きい。主なリスクは海外に起因しており、米欧における根強い物価高が一段と強力な金融引き締めを招き、金融不安を拡大させるリスクなどが挙げられる。こうした場合には、輸出の停滞などを通じて、わが国景気に大きな影響を及ぼし得ると考えられるため、海外経済の動向を引き続き注意深く点検していく必要がある。

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