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短期経済予測 (2023年4-6月期~2025年1-3月期)

物価上振れでも景気回復続く

―米欧の根強い物価高、引き続きわが国景気の下振れリスク

短期予測班

 

2023/06/08

日本経済研究センターでは、5月17日公表の予測(以下SA194)を改訂した。本改訂版(SA194R)は、6月8日に公表された2023年1~3月期の国内総生産(GDP)の2次速報値(2次QE)などを踏まえたものである。

  • SA194Rでは、SA194と同様に、米欧での金融不安の影響は限定的なものにとどまり、海外経済が堅調に推移する中で、わが国の景気は回復を続けると予測した。すなわち、実質GDP成長率は、2023年度が前年比+0.9%、2024年度は同+1.2%と、ゼロ%台前半とみられる潜在成長率を上回って推移すると予測した。物価見通しについては、企業による家計への価格転嫁の動きが強まっていることを踏まえて、消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)の前年比を2023年度+3.0%、2024年度+2.6%とSA194(2023年度:同+2.7%、2024年度:同+2.4%)から0.3%ポイント程度上方修正した。
  • 海外経済の実質GDP成長率は、SA194と同様に、2023年が前年比+2.4%、2024年は同+2.9%と予測した。主要地域について、米欧経済は、米国地方銀行の相次ぐ破綻などの金融不安が銀行の融資姿勢の慎重化を通じて実体経済に波及するとみられるが、その影響は限定的なものにとどまり、2024年入り後、はっきりと持ち直していくと見込んでいる。中国は、経済再開後に回復の続くサービス消費が景気をけん引する一方、不動産セクターが景気下押し要因として作用し続けるとみられる。
  • こうしたもとで、わが国について、輸出は、財輸出が厳しい状況にあってもインバウンド需要(訪日外国人による消費)の増加を背景とするサービス輸出にけん引され、増加基調を維持すると予測した。設備投資は、企業収益が増加を続ける中、株価も高水準で推移するもとで、着実に増加していくと見込んでいる。また、個人消費については、物価上昇が実質所得を押し下げている点には注意を要するが、物価上昇率が緩やかながらも低下していく中で、高めのベースアップを通じて雇用者所得がはっきりと増加するもとで、サービス消費が正常化に向かい、景気回復を主導するとみている。
  • ベースラインのシナリオとして、わが国の景気は回復を続けるとみているものの、不確実性は高く、景気下振れのリスクが大きい。主なリスクは海外に起因しており、米欧において物価高が根強く続いた場合には、一段の金融引き締めにより海外経済が下振れし、それが輸出の停滞を通じて、わが国景気にも影響を及ぼし得る。そのため、引き続き、海外の経済・物価・金融動向を注意深く点検していく必要がある。

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