- 開催:
- 07月05日(木) 14:00~15:30
- 会場:
- 日本経済新聞社東京本社ビル 6階セミナールーム2
朝鮮半島をめぐる関係国の対話の進展で、北東アジア情勢が大きな転機を迎えています。米朝首脳会談の行方は焦点の核・ミサイル問題だけでなく、北東アジアに残る冷戦構造や韓国・北朝鮮の南北分断状況にも影響を及ぼします。米朝首脳会談後の北東アジア情勢はどう展開するのか。日本は北朝鮮との関係を含め、北東アジアの平和と新秩序づくりにどう関与すべきか。日朝交渉に携わった経験もある田中氏にお話いただきます。
■講師略歴
1969年京都大学法学部卒、外務省入省。在サンフランシスコ日本国総領事、経済局長、アジア大洋州局長、外務審議官などを経て、2010年から現職
■要旨
北朝鮮の非核化は長期の過程―求められる日本の戦略的外交
①北朝鮮の核開発は1980年代末に経済発展著しい韓国をけん制するために開始された。これまで94年と2005年の2回にわたって北朝鮮の非核化に関する合意がなされたが、合意形成を主導した米国と北朝鮮の間で相互不信が広がり、どちらの合意も機能不全となった。米国は北朝鮮が合意内容を履行していないと認識し、北朝鮮は米国からの先制攻撃を非常に警戒していた。
②2018年6月12日に史上初の米朝首脳会談がシンガポールで開催された。北朝鮮は①米国の軍事的圧力強化②中国の制裁参加――という2つの圧力を受け、核兵器を対米交渉のカードとして用いるようになった。このような北朝鮮の態度には「段階的な核兵器廃棄の見返りとして、自国の安全保障を約束して欲しい」という思惑が反映されている。
③北朝鮮の核兵器廃棄は5年以上の時間をかけた長期的なものとなるだろう。日本は圧力一辺倒の外交ではなく、将来的な経済協力構想を含めた長期的な戦略を持つことが重要だ。日本にとっての最重要事項である北朝鮮による拉致問題も、核兵器廃棄交渉やそれに続く日朝国交正常化交渉の中に上手く位置づけ、解決を図っていくべきだ。
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