イノベーターのジレンマ―解明と対策

伊神満・イェール大学経済学部准教授
開催:
09月07日(金) 14:00~15:30
会場:
日本経済新聞社東京本社ビル 6階セミナールーム2

 一時代を築いた「勝ち組」はどうして新世代の競争に出遅れがちなのか?経営学の提起した有名な問題を、経済学の理論とデータ分析を使って解明します。「共喰い」「抜け駆け」「能力格差」という着眼点と、「理論の補助線を活用した実証分析」を紹介した上で、企業や政府にとって本当に大切な『問い』は何なのかを示します。

■講師略歴
 2002年東京大学教養学部卒業後、外資系証券会社に株式アナリストとして勤務。07年東京大学大学院経済学修士、12年UCLAアンダーソン経営大学院博士。スタンフォード大学客員助教授、MIT客員准教授を経て現職 

■要旨

誰がための解決か?―「問い」の設定こそが重要

① 「イノベーターのジレンマ」とは、「一時代を築いた『勝ち組』である既存企業が、新世代の技術・競争に出遅れてしまう」という問題だ。経済学的に解明すると、その根本的な理由は、新製品と旧製品が利益を「共喰い」することにある。
② 既存企業が「ジレンマ」を克服し生き延びるための策は、①「共喰い」の容認、②新事業の創業、の2つに集約される。前者は、従来事業を損切りすることであり、後者は、需要と供給の「新たな出会い」の実現だ。
③ しかし、「既存企業のサバイバル」が唯一最大の目的であるかのように思い込むのは、大きな誤ちである。既存企業の当事者(経営者、社員、株主)同士の利害、また新参企業、消費者、そして社会全体の利害は対立しうる。誰のための「解」を求めるのか、何をもって「解決」とするのか、問題設定そのものの磨き込みが肝心だ。これは、「問題解決」一般に応用できる考え方でもある。

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