- 開催:
- 09月28日(金) 10:00~11:30
- 会場:
- 日本経済新聞社東京本社ビル 6階セミナールーム2
一帯一路構想は、習近平氏の新たな外交理念であるだけでなく、対外開放の新たな展開と地域間格差是正を狙った経済政策パッケージでもあります。構想の経済的狙いと効果を分析し、それがもたらす中国流グローバル・ガバナンスと世界への影響について展望いただきます。マレーシア、モルディブ、トランプ政権などの最近の動きが構想の推進に与える影響についても触れる予定です。
■講師略歴
1977年早稲田大学政治経済学部卒、アジア経済研究所入所。86年在中国日本国大使館(北京)勤務、97年中国社会科学院工業経済研究所客員研究員、2006年アジア経済研究所地域研究センター長、08年ジェトロ上海センター所長、11年アジア経済研究所新領域研究センター長などを経て、13年から現職
■要旨
急拡大する中国主導の経済圏―外交摩擦・相手国債務に懸念も
- 中国の一帯一路構想には、中国主導の経済圏を世界に広めていくという「対外的な意図」と、構想をテコに国内の経済格差是正や経済構造転換を推し進めていくという「国内的な意図」の2つが込められている。大規模インフラ開発、自由貿易協定(FTA)網の拡充、中国による対外直接投資の拡大という3つの要素が構想のダイナミズムを支えている。
- 他方、一帯一路の沿線国はロシアが主導する既存の多国間機構にも加盟しているため、一帯一路構想による外交摩擦が生じている。また支援相手国が過剰な債務を抱えてしまうという債務トラップの問題も深刻化している。中国自身もこれらの問題点を認識しており、今後、どのように構想を修正していくかが注目される。
- 中国は構想を通じ、各地に軍用港を建設するなどしてグローバル・ガバナンス(世界規模の統治体制)への関与を強めようとしている。インフラ建設や直接投資などにより中国の技術規格も急速に世界に浸透している。最近の米中経済摩擦は世界の技術覇権を握ろうと狙う中国にストップをかけようとする米国の意向が働いたものだ。経済摩擦が長期化すれば、中国が技術鎖国やブロック経済化の誘惑にかられる可能性も否定できない。
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