デジタル課税の論点

土居 丈朗・慶應義塾大学経済学部教授
開催:
05月23日(木) 14:00~15:30
会場:
日本経済新聞社東京本社ビル 6階セミナールーム2

■講師略歴

(どい たけろう) 1993年大阪大学経済学部卒、99年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。慶應義塾大学准教授などを経て、2009年から現職。経済学博士

 

■要旨

無形資産による超過収益に税―欧州各国、相次ぎ売上税採用

①デジタル課税の議論は多国籍企業の租税回避防止を目的とする経済協力開発機構(OECD)のプロジェクトが起源で、「価値が創造されたところで税金を支払う」という原則に即して議論されている。デジタルビジネスで、利益を上げる取引をした顧客を突き止めてその地で課税することを模索している。デジタル課税は消費課税と似たところがある。

②欧州委員会(EC)が2018年にデジタル課税の報告書をまとめた。しかし、EU諸国が合意できなかったことから、19年から英国・フランス・イタリア・スペインは相次いで、デジタルビジネスに対する売上高への課税という形でデジタル課税導入に動いている。

③デジタル課税は20カ国・地域(G20)首脳会議でも議論の対象となっている。議論の柱は主に、①国家間の利益配分ルールの見直し、②税源浸食への対抗措置―の2点で、合意すれば包括的な法人税改革の流れにつながるが、合意できないと各国が個別に対応して混とんとした状況が続く。