ブレグジットと揺れる欧州の行方

庄司克宏・慶應義塾大学大学院法務研究科教授
聞き手)刀祢館久雄・日本経済研究センター研究主幹
開催:
05月30日(木) 10:00~11:30
会場:
日本経済新聞社東京本社ビル 6階セミナールーム2

■講師略歴 

(しょうじ かつひろ) 1990年慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。横浜国立大学大学院助教授、同教授などを経て、2004年から現職。著書に『ブレグジット・パラドクス』など

 

■要旨

英EU合意一部修正して離脱へ―ポピュリスト政党の躍進に注意

①イギリスの欧州連合(EU)離脱は、メイ首相による当初の強硬な姿勢によってEUとの交渉が混迷した。離脱協定の北アイルランド議定書が保守党内でコンセンサスを形成できず、イギリスが重視した貿易を含む将来関係協定の交渉まで行きつけなかった。その結果、メイ首相の首相辞任につながった。

②今後のブレグジットの行方を巡っては、5つの想定シナリオ(離脱通告撤回、ソフトな離脱、既存の合意の一部修正、再交渉による新合意、合意なき離脱)が挙げられる。可能性が高いのが、既存の合意の一部修正だ。保守党は総選挙を避けるため、合意なき離脱の強行は避けるだろう。

③5月の欧州議会選挙ではポピュリスト政党が議席を伸ばしたが、大陸欧州諸国はEU加盟から恩恵を受けているため、ポピュリスト政党はEU離脱を主張しないだろう。一方、ポピュリスト政党が自国で多数派となれば、EU首脳会議や閣僚理事会を通じて影響力を及ぼす懸念がある。