加速する人手不足、労働市場の今を探る

神林龍・一橋大学経済研究所教授
開催:
10月16日(水) 14:00~15:30
会場:
日本経済新聞社東京本社ビル 6階セミナールーム2

■講師略歴
(かんばやし りょう) 東京大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科博士課程修了、博士(経済学)。東京都立大学助教授、スタンフォード大学経済学部客員研究員などを経て、2010年より現職

 

■要旨
日本的雇用慣行は強固に残存―非正社員の増加、自営業衰退が背景

①日本的雇用慣行の動向について、コアの部分は強固に残存している。同じ企業に10年後まで勤め続ける10年残存率を時系列でみると大卒男性ではあまり変化していない。そして現役世代に占める正社員の比率が変わっていないのに非正社員が増えている。これは自営業セクターの衰退と対応している。

②強固な日本的雇用慣行の源泉は労使自治の原則にある。この原則に従う限り、使用者と労働者の2者間で合意が形成されているのであれば、その範囲の秩序を変える必要はない。また、就職氷河期については、大卒者について初職で不利な状況に置かれたことがついて回る「履歴効果」は確認できていない。

③「雇われない働き方」は10年、15年のサイクルでブームになるが、実際には自営業比率は下がり続けている。その理由として、労使自治と公正競争の2つの世界のルールのズレを調整する方法が見出されていない点があげられる。外国では、中間団体がこの領域をカバーすることが多いが、日本ではなぜか発達しない。