グローバル・バリューチェーンから読み解く国際経済の力学

猪俣哲史・ジェトロ・アジア経済研究所上席主任調査研究員
開催:
10月24日(木) 14:00~15:30
会場:
日本経済新聞社東京本社ビル 6階セミナールーム2

■講師略歴
(いのまた さとし) 1991年オックスフォード大学修士号、2014年一橋大学博士号取得。17年から現職。国際産業連関学会会長。近著に『グローバル・バリューチェーン ―新・南北問題へのまなざし』

 

■要旨
国際貿易は付加価値で把握を―米中貿易不均衡の解決、東アジア全体で

①国境を越えた生産分業が進み、途上国も自国の生産技術レベルに見合った製造工程に注力することで、ハイテク製品の生産に関われるようになった。国際分業の進展は途上国の経済発展プロセスを大幅に圧縮したが、いっぽうで、非熟練労働をめぐる先進国と途上国の対立を生んだ。

②国際分業が進んだ現状では、国際貿易を付加価値ベースで考える必要がある。現在の貿易統計は、製品が様々な国による国際分業の成果だという事実を反映していない。そのため価値の源泉が取り違えられ、歪んだ貿易収支として表れることになる。

③東アジア地域には、日本や韓国などが高付加価値の部品・付属品を供給し、中国で完成品が組み立てられて米国に輸出されるといった独特の分業システムがある。したがって、米中貿易不均衡の解決には東アジア地域全体の協力が不可欠である。