2020年の海外リスクを読む

実哲也・関西学院大学総合政策学部教授(米国)
伊集院敦・日本経済研究センター首席研究員(中国・朝鮮半島)
牛山隆一・同主任研究員(東南アジア)
モデレーター兼)刀祢館久雄・同研究主幹(欧州など)
開催:
01月17日(金) 14:00~15:30
会場:
日本経済新聞社東京本社ビル 6階セミナールーム2

■講師略歴
(じつ てつや) 1982年東京大学法学部卒、日本経済新聞社入社。ワシントン支局長、編集局次長兼経済金融部長、論説副委員長、上級論説委員、日経センター研究主幹などを経て、2019年から現職

 

■要旨
米大統領選と米中摩擦が重大リスク―対立の舞台は拡大へ

①米国では、大統領選挙が予定される。トランプ大統領の再選の行方を左右するのは、激戦州の動向である。激戦州では、トランプ大統領不支持が多数を占めるものの、支持と不支持の差は縮小傾向にある。

②米中対立の舞台は、貿易・通商にとどまらず、人権問題にまで波及している。議会を中心として、対中強硬論が高まった場合、トランプ大統領にも抑えられないだろう。民主党と共和党は、中国脅威論で一致している。特に、人権問題に対する両党の溝は小さい。人権問題を契機として、米中対立が一層深刻化するリスクがある。台湾は5月の総統就任式、香港は9月の立法会議員選挙が注目。米中の技術覇権争いは長期化が予想され、「新冷戦」の固定化につながるリスクがある。

③米中対立の影響は、東南アジアにも及んでいる。2019年のASEAN各国の経済成長率は、総じて鈍化した。今年1月に公表された世界銀行の「世界経済成長見通し」でも、ASEAN諸国の経済成長率の見通しが下方修正された。米中対立により漁夫の利を得ている国もあるが、域内の対米貿易黒字額が中国に次ぐ規模のASEANが、米国の標的となるリスクも内在する。

④英国は欧州連合(EU)からの離脱移行期間中にEUとの貿易協定をまとめられるかが焦点だが、ハードランディングは避けるだろう。EUは欧州委員会の新体制のもと、環境やデジタル政策で存在感強化を目指す。ドイツ経済の減速などが課題だ。