量子コンピュータの可能性と開発競争

藤井啓祐・大阪大学大学院基礎工学研究科教授
開催:
01月21日(火) 13:30~15:00
会場:
日本経済新聞社東京本社ビル 6階セミナールーム2

■講師略歴
(ふじい けいすけ) 2011年京都大学大学院博士課程修了、工学博士。大阪大学、京都大学、東京大学での研究を経て、19年から現職。JSTさきがけ研究者を兼務。近著に『驚異の量子コンピュータ』

 

■要旨
探索続く役立つ技術への応用―イノベーションへ産学連携を

①1980年代に量子コンピュータの基礎となるアイデアが提示されて以降、量子コンピュータは1990年代の第1次ブーム、2000年代の停滞期間を経て、現在は第2次ブームにある。

②グーグルやインテルなどの世界的プレーヤーは汎用量子コンピュータの開発に乗り出し、競争が激化している。一方、日本企業は特定の最適化問題を解くことに特化した独自路線の量子コンピュータの開発に取り組んでいる。

③現在、実証に耐え得るレベルの量子コンピュータは極めて限定されたタスクにおいて既存のスーパーコンピュータを圧倒。しかし、暗号解読等の役に立つ技術への応用へは楽観的に見積もっても20年程度はかかることが予想される。

④量子コンピュータの期待される応用領域は、化学・材料、金融、人工知能と幅広く、探索が続いている。産業イノベーションにつなげるには基礎理論に強いアカデミア(学界)と社会実装に強みを持つ企業が協力する産学連携が不可欠である。