シリーズ デジタル資本主義 (第2回)

どうなるデジタル通貨とキャッシュレス化

岩下直行・京都大学公共政策大学院教授
開催:
02月05日(水) 14:00~15:30
会場:
日本経済新聞社東京本社ビル 6階セミナールーム2

■講師略歴
(いわした なおゆき)1984年慶応義塾大学経済学部卒、日本銀行入行。同金融研究所情報技術研究センター長、下関支店長などを経て、2016年初代フィンテックセンター長に就任。17年から現職

 

■要旨
「金融包摂」が世界各国で進展―リブラ、CBDCの発行は困難

①スマートフォンなどを使ったキャッシュレス決済の普及により、金融サービスによる恩恵が隅々まで行き渡る「金融包摂」が、新興国、途上国を含め世界中で進展している。しかし、日本では反対意見が多く、キャッシュレス化は進んでいない。

②フェイスブックが暗号資産「リブラ」の発行に向けて動いているが、私は発行は難しいと考えている。大幅な価格変動のリスクがあり、主要法定通貨のバスケット価値に連動するため、日常の支払いなどにも不便である。脱税や武器・麻薬取引のための資金洗浄などに使われる恐れもある。

③中央銀行デジタル通貨(CBDC)の発行可能性を巡る議論も高まっている。中国人民銀行が人民元の国際化などを目的に、発行に向けて準備を進めているようだ。しかし、国際化は難しく、国内だけの利用にとどまるだろう。また、民間ベースのキャッシュレス決済が普及すれば、中央銀行がリテールCBDCを発行する必要はないと考える。