「日本化」の拡がりと金融政策の新領域

早川英男・東京財団政策研究所上席研究員
聞き手)左三川郁子・日本経済研究センター主任研究員
開催:
04月09日(金) 14:00~15:00
会場:
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*収録動画の配信は終了いたしました

■講師略歴
(はやかわ ひでお) 1977年東京大学経済学部卒、日本銀行入行。83-85年プリンストン大学大学院留学(経済学専攻、MA取得)。2001年調査統計局長、09年理事、富士通総研経済研究所エグゼクティブフェローを経て、20年から現職

 

■要旨
マクロ経済対策の主役は金融政策から財政政策へ―中央銀行は新たな政策領域を模索

①日本銀行は、2021年3月の金融政策決定会合で金融緩和政策の「点検」の結果を公表し、政策の枠組みを変更した。今回の変更では、上場投資信託(ETF)買い入れの年間上限額が維持される一方で、年間購入額のめどは削除された。これにより、日銀の金融政策正常化路線はとりあえずの終着点に到達したといえる。

②コロナ危機下で、マクロ経済政策の主役は金融政策から財政政策に交代した。金融政策は、企業の資金繰り支援、金融市場の安定、間接的な財政ファイナンスといった脇役に徹している。

③中央銀行の政策領域の拡大が模索されている。その中でも、気候変動対策に金融政策を活用しようとする欧州中央銀行(ECB)の動きが注目を集めているが、内部の意見は統一されておらず、いまだ明確な方向性は示されていない。米連邦準備制度(FRB)は、バイデン政権下で所得格差縮小への協力を求められており、雇用最大化目標を強化することでこれに応えようとしている。

④米国は「日本化(ジャパニフィケーション)」に抗うために大規模な財政政策を実施している。今後の米国経済は、成長鈍化の原因、(失業率と物価の関係を示す)フィリップス曲線の形状、資産バブルの存在の有無に応じて、4つのシナリオが考えられる。