コロナ対策1年、セーフティネットのあり方を問う

鈴木亘・学習院大学経済学部教授
開催:
04月14日(水) 14:00~15:00
会場:
---

*収録動画の配信は終了いたしました

■講師略歴
(すずき わたる) 1994年上智大学卒、大阪大学博士。日本銀行、日経センターなどを経て2009年から現職。内閣府規制改革会議や国家戦略特区WG委員、大阪市や東京都の特別顧問なども歴任。共著『生活保護の経済分析』『健康政策の経済分析』が日経・経済図書文化賞、『だまされないための年金・医療・介護入門』が日経BP・BizTech図書賞を受賞。近著に『社会保障と財政の危機』

 

■要旨
感染予防と経済回復の両立を―ITと失業保険で労働移動促せ

①新型コロナウイルス感染の影響による不況は、リーマンショック後と比べ雇用情勢を中心に経済への影響は小さい。これは、1.感染が始まる前の経済の状況が良かったこと、2.財政支援が敏速の行われたことなどが理由だ。しかし、現時点でみると財政支援はやりすぎの状態だ。しかも、さまざまな支援策が必ずしも景気回復に結びついているとは言えない。

②コロナ感染による不況に対する正しい処方箋は、感染拡大に伴う死者数と、不況による自殺者の数をともに減らす「両立化策」だ。例えば、感染が広がってもすぐに緊急事態宣言を出さなくて済むよう、崩壊しにくい医療体制を整えるほか、情報技術(IT)を使い、感染予防をしつつ経済活動を維持できるような社会の仕組みをつくることだ。

③セーフティネット(安全網)づくりも、単なる財政資金のバラマキに終わらないよう、人々が生活保護の対象となる前に、職業訓練を受けて成長分野に転職できる道を開く失業保険制度の充実に重点をおくべきだ。需要が急減した業種から他産業への出向をハローワークが仲介するほか、所得が急に減った人への一時的支援策として「自己申告制の税還付」なども検討の価値がある。