コロナ下の景気変動、コロナ後の経済成長

齋藤 潤・
日本経済研究センター研究顧問
開催:
04月28日(水) 14:00~15:00
会場:
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*収録動画の配信は終了いたしました

■講演録要旨
リスク対応力の脆弱性克服を
―労働生産性向上へ働き方改革も必要

①新型コロナウイルスの感染拡大で、日本経済は急激に悪化した。需要サイドだけでなく供給サイドへの影響も甚大で、モノやサービスの動きが停滞。需要サイドにおける家計消費への悪影響も表れた。ただ、米国とは違い、失業率の上昇は小幅にとどまっている。失業者ではなく休業者が増えたためで、雇用調整助成金も支えとなった。

②コロナ後にまず取り組む必要があるのは、デフレ再現への対応である。その後は金融政策の正常化に進むことになるが、日本には財政再建という課題もある。どちらを優先するかの順序付けは極めて重要だ。いずれにしても高い経済成長が不可欠。潜在成長力の引き上げと格差拡大を防ぐ再分配政策の改革が、経済成長を目指すための基本的課題となる。

③コロナ後の構造政策上の課題を労働投入という観点でみると、スキル制約、出生率低下、外国人労働者の受け入れ減少という3つのリスクが挙げられる。また、災害など想定外のリスクへの対応も重要だ。日本はリスクへの対応力が脆弱であり、特に複線型サプライチェーンの構築、リモートワークの拡大、首都機能の分散といったリスク対応力強化策が求められる。

■講師略歴(さいとう じゅん)
1978年 東京大学大学院経済学研究科修士課程修了、経済企画庁(現内閣府)入庁。82年英国オックスフォード大学大学院留学、87年国際通貨基金(IMF)事務局エコノミスト、96年当センター主任研究員(短期経済予測主査)。内閣府参事官(経済財政運営:総括担当)、大臣官房審議官(経済財政運営担当)、政策統括官(経済財政分析担当)を経て、2012年より現職。12年より慶応義塾大学大学院商学研究科特任教授(常勤)(~17年)、16年より国際基督教大学教養学部客員教授(~21年)も務めた。