急増するESG債の発行―実相と課題

香月康伸・みずほ証券サステナビリティ推進部SDGsプライマリーアナリスト
聞き手)稲葉圭一郎・日本経済研究センター短期経済予測主査
開催:
06月24日(木) 14:00~15:00
会場:
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*収録動画の配信は終了いたしました

■講師略歴
(かつき やすのぶ) 1989年山一證券入社。98年興銀証券(現みずほ証券)金融市場調査部、プロダクツ本部などを経て、2021年から現職

 

■要旨
「ゼロエミ」へ高まるESG債の重要性―商品設計も進化、「移行戦略」と紐付け

①ESG(環境・社会・企業統治)に資金使途を絞った債券、「ESG債」の発行が近年急増している。ただ、発行コストの節約という面では妙味に乏しい。発行利回りが伝統的な無担保債券に比べて特段低いわけではない。さらに、資金使途となっているプロジェクトの適切さや成果に関する評価・報告コストもかかる。

②他方、ESG債には発行体にとって、好調な販売を望める、社債権者を多様化できるといった利点があり、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けた取り組みを進める社内機運を高める効果もある。

③投資家の間では、資金使途先プロジェクトのみならず発行企業のESG経営への移行戦略を評価する動きが強まっている。これに呼応し、ESG債の商品性は各社の移行戦略と紐付く形で進化している。

④わが国の企業部門では、菅義偉首相の「2050年ゼロエミッション」宣言以降、ESG経営への移行戦略の重要性が一段と高まっている。同戦略に基づく企業経営が広がるにつれて、ESG債は資金調達手段として主流の債券になっていくかもしれない。