経済学をマーケティングに活かす
- 上武康亮・イェール大学経営大学院マーケティング学科准教授
- 聞き手)田原健吾・日本経済研究センターデータサイエンス研究室長
- 開催:
- 11月19日(金) 10:00~11:00
- 会場:
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*収録動画の配信は終了いたしました
■講師略歴
(うえたけ こうすけ)2005年東京大学経済学部卒業。07年東京大学大学院経済学研究科修士課程終了。13年米国ノースウェスタン大学経済学博士号取得(Ph.D)。同年米国イェール大学経営大学院マーケティング学科助教授。18年から現職
■講演録要旨
慣習に基づく意思決定からの脱却―経済理論、データ分析の過ち防ぐ
①従来のマーケティングは、経験や直感、もしくは慣習に基づいて意思決定されることが多かった。しかし、2010年代以降、ビッグデータが社会に浸透するようになり、データ保存費用の低下、計算能力の向上、計量・統計モデルの進化の3つの要因によりマーケティング・サイエンスとして進化してきた。そして現在、多くの企業で実用化され始めている。
②意思決定の根拠とされてきた経験や直感、慣習について、ランダム化比較実験や自然実験アプローチにより因果関係を特定することは、それらの意思決定がきちんとデータで裏付けられる、もしくはデータを使って反証し改めることができるという点でも重要な意味がある。従来のようなキャンペーンの事後検証のみでなく、実際に効果があるかを意思決定の前に予め確かめることが重要だ。
③近年では機械学習の応用が進む一方、理論なき計測や、消費者・企業の行動を理解しないままにデータが扱われることが問題となっている。経済学や社会科学などの理論的な理解を深めたうえで、データや機械学習を有効活用することが重要であり、競合他社との差別化要因となる。ビジネスを理解したうえでデータ・サイエンスとコミュニケーションを取れる人材の育成と、データの収集および分析のサイクルを企業内に文化として根付かせることが必要である。