シリーズ DX社会で高まる経済学の力 (第7回)
マーケットデザインによる組織変革と人事マッチングの可能性
- 小島武仁・東京大学マーケットデザインセンター長
- 聞き手)田原健吾・日本経済研究センターデータサイエンス研究室長
- 開催:
- 12月02日(木) 11:00~12:00
- 会場:
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*収録動画の配信は終了いたしました
■講師略歴
(こじま ふひと)2003年東京大学卒、08年ハーバード大学経済学Ph.D.取得。19年スタンフォード大学教授、20年から現職。専門はマッチング理論、マーケットデザイン。18年第5回円城寺次郎記念賞、第15回日本学士院学術奨励賞、21年度中原賞などを受賞。The Econometric Society(計量経済学会)フェロー(終身特別会員)に選出
■要旨
マッチングアルゴリズムによる最適人材配置―広がるマーケットデザインの社会実装
①マーケットデザインとは制度設計の学問であり、人々のインセンティブを考慮しながら、普通の「市場」がないところに「市場を創る」ことをしている。例えば、労働市場や組織内の人材配置にマーケットデザインが適用されており、組織内では従業員側とマネージャー側の双方のニーズを加味したマッチングができること、人材配置の自動化が可能になることなどの利点がある。
②マッチング方式には「ボストン方式」(受け入れ即決方式)や「G-Sアルゴリズム(受け入れ保留方式)」などがあるが、G-Sアルゴリズムは、ミスマッチを防ぐことができること、「Strategy-proofness」(戦略的に操作できないという性質)が確保されること、説明責任を果たしやすいことなどの利点から、Googleのエンジニア配属決定をはじめ広く活用されている。
③日本では東証一部の製造業で2021年4月に新入社員と部署のマッチングにG-Sアルゴリズムを活用した事例がある。事前説明やカスタマイズの必要性はあるものの、ポジティブな評価が得られており、全社的人事配属にまで対象が広がっている。