シリーズ DX社会で高まる経済学の力 (第8回)

景気変動と健康―経済学とデータサイエンスの観点から

井深陽子・慶應義塾大学経済学部教授
聞き手)田原健吾・日本経済研究センターデータサイエンス研究室長
開催:
01月25日(火) 14:00~15:00
会場:
---

*動画の配信は終了いたしました
*資料の掲載はございません

■講師略歴
(いぶか ようこ)慶應義塾大学経済学部卒業、同大学大学院経済学研究科修士課程修了。米ラトガース大学経済学部で経済学の博士号(Ph.D.)を取得。米エール大学公共衛生大学院ポストドクトラル・アソシエイト、一橋大学国際・公共政策大学院専任講師、京都大学大学院薬学研究科特定准教授、東北大学大学院経済学研究科准教授等を経て、19年から現職

■要旨
景気動向が健康に与える様々な影響―大規模な業務データから見る因果関係

①新型コロナウイルス感染症の感染が拡大する中、健康と経済の関係に対する注目が高まっている。これまで様々な研究によって景気動向が健康に与える影響に関する知見が積み重ねられてきた。先行研究から、景気動向の変化による失業、消費、生産など複数の要素を通じて健康に影響があり、諸外国の研究は総合的に見れば景気動向の悪化が健康状態の改善を示唆している。

②経済と健康についてその因果関係を証明することは簡単ではないが、それには大規模で信頼性と即時性が高い業務データが必要不可欠である。健康に関するデータと経済に関するデータのリンケージを明確にすることで、政策的なインプリケーションのある知見を得ることが可能になる。

③データの質が向上するにつれ研究はさらに進んでいる。世界的には景気動向の悪化が健康状態を改善する傾向があるものの、日本ではその傾向が見られず、むしろ自殺などの要因によって健康状態が悪化している。また、失業が健康に与える影響はセーフティーネットが充実している国にも見られることから、健康への影響を緩和する取り組みの強化が求められる。