減速する中国経済

関志雄・野村資本市場研究所シニアフェロー
聞き手)上原正詩・日本経済研究センター主任研究員
開催:
02月04日(金) 14:00~15:00
会場:
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■講師略歴
(かん しゆう)1979年香港中文大学卒、東京大学経済学博士。香港上海銀行、野村総合研究所、経済産業研究所を経て、2004年から現職

■要旨
民営企業抑え込みは経済に悪影響―米中分断、潜在成長力下げる恐れ

①中国経済は2021年後半から減速し始めている。その背景にはコロナ情勢をめぐる不確実性と住宅市場の調整がある。これらの影響が長引き、2022年の中国の成長率は前年の8.1%から低下し、4~5%になると見込まれる。

②中国経済の減速は、世界経済にさまざまな影響を与える。例えば、中国の不動産市場の調整が進むと、住宅向けなどの鉄鋼需要が減少、中国の鉄鋼メーカーが輸出ドライブをかける一方で、生産を抑えると予想される。その結果、鉄鋼製品に加え、鉄鋼産業が大量に消費する鉄鉱石や石炭の国際価格が引き下げられるだろう。

③中長期的には、市場化路線の後退や、労働力不足、海外からの技術導入が困難になるという後発の優位性の喪失なども成長の制約となる。中国政府は、少しでも高い成長を維持するため、国内の経済循環を強化し、国内と国際の循環を相互に促進する「双循環戦略」を打ち出した。これまで、日本と中国は経済的には補完関係にあったが、この戦略が成功すると、中国は日本の部品や技術に頼らなくても良くなるので、中国企業と日本企業は競合関係に入ることになる。