2021年度日経・経済図書文化賞受賞
日本の賃金は上昇するか

山口慎太郎・東京大学大学院経済学研究科教授
開催:
02月16日(水) 14:00~15:00
会場:
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*動画の配信は終了いたしました

■講師略歴
(やまぐち しんたろう) 2001年慶応義塾大学大学院商学研究科修士課程修了、06年米ウィスコンシン大学経済学博士号(Ph.D.)取得。カナダ・マクマスター大学助教授、准教授、東京大学准教授を経て、19年から現職。『「家族の幸せ」の経済学』で第41回サントリー学芸賞受賞、『子育て支援の経済学』で21年度 日経・経済図書文化賞受賞

■要旨
カギ握る労働生産性の向上―企業の新陳代謝、人的資本投資拡大が急務に

①過去30年間のデータでは、先進国では賃金が上昇しているのに対し、日本の賃金は横ばいだ。なぜ、日本だけ賃金が低迷しているのか。様々な仮説があるが、どの仮説も単独では賃金の伸び悩みを説明するには不十分だ。賃金が伸び悩んでいる原因はかなり複雑だ。

②賃金格差について、国際的な問題意識が共有されてきている。米国では賃金格差の拡大は企業間の賃金格差の拡大が強く影響している。私も加わった日本の賃金格差についての共同研究によると、日本の賃金格差拡大も企業間格差の拡大に起因している。特に2000年代以降、生産性が賃金に与える影響が強まってきている。

③賃金上昇には生産性の向上が不可欠だ。日本の労働生産性の水準はかなり低く、改善の余地がある。労働生産性の向上には、企業の新陳代謝の活発化と人的資本投資の拡大が重要だ。岸田政権の賃上げ税制が注目を集めているが、労働コストを相対的に安くすることで、設備投資が減少しかねないことを懸念している。