- 開催:
- 05月17日(火) 14:00~15:00
- 会場:
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*収録動画の配信はございません
(にしむら ゆうさく) 2002年から北京在住。10年対外経済貿易大学経済学博士取得、同大学日本人初の専任講師。同副教授を経て18年から現職。日本銀行北京事務所客員研究員。専門は中国経済・金融。近著に『数字中国(デジタル・チャイナ)―コロナ後の「新経済」』(22年2月、中公新書ラクレ)
■要旨
リスクとらぬ融資拡大、当局が問題視―組込型金融、既存銀行がフィンテック化へ
①中国のデジタルプラットフォーマーで金融分野の最大手、アント・グループはデジタル決済サービス「アリペイ」の利用データから算出した顧客の信用スコアを使い、小口融資や資産運用、保険などデジタル金融サービスのビッグビジネスとなった。しかし、成長の過程で信用リスクを既存の金融機関に転嫁する形で融資を急拡大させ、これを問題視する当局が規制に乗り出した。
②アントは自社のサービスを通じ、国有の大手銀行が敬遠していた中小・零細企業への融資も積極的に手がけるなど、多くの社会貢献をしてきた。しかし、規制強化により、今後、アントを始めとするプラットフォーマーが、事業をさらに拡大することは難しくなる。規制強化が行き過ぎれば、消費や投資が伸び悩むなど、中国経済全体への影響が心配される。
③フィンテック企業への規制強化により、プラットフォーマーを核とした中国式の組込型金融のあり方は大きく変化し、既存の金融機関のフィンテック化が進むだろう。政府は金融分野だけでなく、経済、社会、政府のデジタル・トランスフォーメーションを進める「数字中国(デジタル・チャイナ)」政策を推進しており、国全体ではデジタル分野を中心に大型の投資が続くとみられる。