岐路に立つ円相場の構造

唐鎌大輔・みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト
開催:
06月14日(火) 14:00~15:00
会場:
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*動画の配信は終了いたしました

■講師略歴
(からかま だいすけ) 2004年慶應義塾大学経済学部卒業、同年日本貿易振興機構(JETRO)入構。07年欧州委員会経済金融総局出向。08年からみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)

■要旨
「停滞の日本」映す円安、「痛み」大きく―インバウンド解禁など対策を

①日本円は現在、主要通貨の中で独歩安となっている。様々な理由は考えられるが、日本だけ、突き詰めれば経済成長が極めて弱いためだ。その上で世界的に見て特異な日銀の金融緩和姿勢や、膨張を続ける貿易赤字も、円相場を下押ししている。にもかかわらず、岸田政権に「経済対策よりもコロナ対策を優先」という姿勢が見られるのが問題である。

②円安を止めるために日本ができる処方箋は次の3つ。①金融政策の正常化②原発再稼働(貿易収支の改善と電力供給の安定化への貢献が期待される)③インバウンド解禁――だ。①と②は意見対立があって難しいとしても、③は比較的、抵抗は小さいはず。21年度の経常黒字は年間12兆円ほどしかなかった。ピーク時で約3兆円あった旅行収支の黒字は、決して小さい数字ではない。

③中長期的に見れば、円相場は過渡期にある。貿易収支の赤字定着は、資源価格の高騰に伴う構造的変化と言えるし、世界最大の対外純資産も、直接投資の比率が上昇しているため、資金引き上げ(レパトリエーション)に伴う円買いが起きにくくなった。日本は「成熟した債権国」から「債権取り崩し国」になる恐れがある。日本人家計の円売りも心配だ。