ポストコロナの中小企業金融

植杉威一郎・一橋大学経済研究所教授
聞き手)左三川郁子・日本経済研究センター主任研究員
開催:
07月06日(水) 14:00~15:00
会場:
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*収録動画の配信期間:10月5日まで

■講師略歴
(うえすぎ いいちろう) 1993年東京大学経済学部卒業、2000年カリフォルニア大学サンディエゴ校博士課程修了(Ph.D. in Economics取得)。通産省(現経済産業省)、資源エネルギー庁、中小企業庁、一橋大学経済研究所准教授を経て、15年から現職。著書に『中小企業金融の経済学』(22年6月)など

■要旨
求められる資金配分の効率性―実証分析により現状を把握

①コロナ禍では中小企業に対する金融支援が様々な形で実施され、企業倒産をきわめて低い水準に抑えるなど、中小企業金融はその役割を十分果たした。ただ、倒産確率を最小化させることだけが中小企業金融の役割ではなく、経済全体の成長に寄与する効率的な資金配分に貢献することが求められる。

②中小企業の間で貯蓄が投資を上回る貯蓄超過傾向が定着し、無借金企業も増大している。一方で、金融機関からの支援がなければ事業継続が難しい、いわゆる「ゾンビ企業」も一定数存在し、今後は事業再生に向けた取り組みが課題となる。地域間の資金循環に目を向けると、生産性の高低に応じた配分はなされていない。近年注目される越境貸出は、信用保証付き貸し出しでのデフォルト率が高い傾向にあるなど、必ずしも効率的な資金配分となっていない。

③信用保証付き貸し出しや政府系金融機関による直接貸出など政府による支援措置は、利用企業の資金繰りを改善する効果をもたらす。一方で、危機の度に長期間支援措置を講じ続けることは、民間の創意工夫を阻害するという点で長期的に弊害をもたらす。ポストコロナに向けて金融機関と政府の役割を再検討することが重要である。