現代中国の統治体制―王朝史から読み解く本質

岡本隆司・京都府立大学 文学部教授
開催:
07月25日(月) 14:00~15:00
会場:
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*収録動画の配信は終了しました

■要旨
「多元」と「一体 」 、続く軋轢―明・清の体制、 社会の膨張 に追いつかず

①中国については最近、習近平国家主席の強権や香港、ウイグルなどの問題が大きく取り上げられているけれども、歴史家には既視感もつきまとう。習氏らが言う「中華民族」とはいったい何なのかなど、歴史的起源から考える必要がある。

②17世紀から20世紀初めにかけての清朝の統治は「多元共存」で、それぞれの地域の風俗・習慣に従って治めるという、緩やかなものだった。だが20世紀前半の中国では、欧米列強や日本に対するナショナリズムが高まった。近代国家の看板を掲げ、チベットなどを「領土」と言うようになった。

③清の時代に共存していた多元勢力は、欧米型の近代国家による世界経済の発展を受けて、行政の目が行き届かない人口の急増・社会の膨張をきたした。そこから生じた分割分裂の危機感から、国民国家への転換をめざし、その後共産党政権へ行き着いた。政権としては「ばらばらになりそうな国を、1つにまとめたい」という課題に現在進行形で直面している。

■講師略歴
(おかもと たかし)1965年生。京都大学大学院博士課程満期退学。博士(文学)。宮崎大学助教授を経て、2016年より現職。専攻は東洋史、近代アジア史。著書に『近代中国と海関』(名古屋大学出版会・大平正芳記念賞受賞)、『属国と自主のあいだ』(名古屋大学出版会・サントリー学芸賞受賞)、『「中国」の形成』(岩波新書)、『世界史序説』(ちくま新書)、『中国の論理』(中公新書)、『中国の誕生』(名古屋大学出版会・樫山純三賞、アジア太平洋賞受賞)、『君主号の世界史』(新潮新書)、『世界史とつなげて学ぶ中国全史』『中国史とつなげて学ぶ日本全史』(東洋経済新報社)、『明代とは何か』(名古屋大学出版会)など多数。