ウクライナ危機と食料安全保障

山下一仁・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹、経済産業研究所上席研究員
聞き手)刀祢館久雄・日本経済研究センター研究主幹
開催:
08月03日(水) 14:00~15:00
会場:
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*収録動画の配信期間:11月2日まで

■講師略歴
(やました かずひと) 1977年東京大学法学部卒業、農林省(現農林水産省)入省。農林水産省農村振興局次長などを経て、2010年からキヤノングローバル戦略研究所研究主幹、2003年から経済産業研究所上席研究員。農学博士

■要旨
減反政策、完全に廃止せよ―コメの輸出で有事に無償の備えを

①食料の輸入依存度が高い日本では、有事の際に、食料に対する物理的なアクセスができない、すなわち、輸入が途絶して必要な分の食料が国民の手に入らないという、食料危機が起こり得る。コメの減反(生産調整)政策により、食料自給率が低下しているためだ。食料輸入が全く途絶えれば、穀物はコメに頼らざるを得なくなるが、現在は必要となる量の半分しか、コメを生産していない。

②減反は補助金で供給を減らしてコメの値段を高く維持する政策だ。農政は減反開始以降、コメ生産を半分以下に減らした。さらに、高いコメ価格を背景に零細な兼業農家が滞留し、単位面積当たりの収量も増加せず、コメ農業は高コスト体質となって衰退した。水資源の涵養(かんよう)や洪水防止など農業の多面的機能をも損なうという、経済安全保障上の重大な問題を引き起こしている。

③食料危機に備えるためには、減反政策を廃止してコメの生産量を大量の輸出が可能となるまで増やすべきである。危機時には輸出分を国内消費に回せば、平時の輸出は無償の食料備蓄になる。また、危機が長期化し、石油も輸入できないと単位当たりの収量が落ちるため、ゴルフ場の農地転換などで農地資源を増加させる必要がある。それでも必要量を満たせないので、平時から必要な穀物を輸入・備蓄しておく必要がある。