核融合発電、商用化への展望と課題

小西哲之・京都フュージョニアリング共同創業者(京都大学特任教授)
開催:
09月06日(火) 15:00~16:00
会場:
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*収録動画の配信は終了しました

■要旨

英米、民間主体の産業化へ動く―スタートアップが挑戦の主役に

①人類の存亡がかかるエネルギー問題は、「枯渇」よりも「あとしまつ」が問題だ。化石燃料はCO₂(二酸化炭素)という廃棄物を出すのが問題だし、CO₂を今後排出できる量は限られているため、CO₂を出す量を減らすだけでは問題解決にならない。エネルギーを使いつつ、大気中からCO₂を削減するという新たな考え方が不可欠だ。

②植物から得られるバイオマスは、CO₂を吸収してできている。これを炭化すれば、CO₂を貯蔵して大気から隔離できるが、新たな熱源が必要になる。こうした新しいエネルギー社会に必要な技術として有望なのが核融合だ。国際プロジェクトによる実験炉の開発計画がフランスで進んでいる。

③英国や米国では民間を主体として核融合産業をつくる動きが始まっている。多額の資金が動くようになったESG(環境・社会・企業統治)投資を利用する。日本では意思決定が遅く、新分野に人材を一気に集める仕組みが乏しいなど核融合への挑戦には社会的な課題がある。一方でスタートアップはリスクのある新事業に挑みやすく、イノベーションの主役になれる。

■講師略歴
(こにし さとし)1979年東京大学工学部工業化学科卒、同大大学院工学系研究科修士課程修了後、日本原子力研究所入所。工学博士(東京大学)。2003年京都大エネルギー理工学研究所教授。2022年退職、 同大名誉教授、生存圏研究所特任教授。2019年京都フュージョニアリング(株)設立、取締役となり現在に至る。専門は核融合工学、サステイナビリティ学。国際協力による核融合プロジェクトITER計画でTBM計画委員会議長及び日本代表を文科省参与として務めた。日本原子力学会理事など歴任。著書に、「エネルギー問題の誤解 いまそれをとく」(化学同人)「CO2はどこへいくのか?炭素循環から考える気候変動」(PHP出版)など。