景気をどう計測するか

増島稔・内閣府経済社会総合研究所長
新家義貴・第一生命経済研究所シニアエグゼクティブエコノミスト
司会)小野寺敬・日本経済研究センター首席研究員
開催:
09月21日(水) 14:00~15:00
会場:
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■講師略歴
(ますじま みのる) 1986年東京大学経済学部卒業、経済企画庁(現内閣府)入庁。米ノースウェスタン大学修了。外務省審議官(国際協力局、経済局担当)、内閣府政策統括官(経済財政分析担当)などを経て、2022年6月から現職。経済学博士。埼玉大学客員教授

(しんけ よしき) 1998年東京大学法学部卒、第一生命保険入社。98年第一生命経済研究所出向、2002年内閣府出向等を経て、22年より現職。「ESPフォーキャスト調査」優秀フォーキャスター(2008~18年度、20年度)

■要旨
幅広い経済活動捉える新指数―高評価も実用化に検証の余地―

①増島氏から、内閣府は経済の構造の変化に対応するため、「景気を把握する新しい指数」(以下、新しい指数)を作成したとの解説があった。新しい指数は経済のサービス化に伴い、サービス関連の指標を取り入れた経済活動の総体量に着目したものであり、景気という目に見えないものを見える化するための一つの見方としての役割を持つが、実用化には課題も存在する。

②新家氏は、新しい指数はより幅広く経済活動の把握が可能になったことなどを高く評価しつつ、4つの課題を指摘した。1つ目は、生産・分配・支出の3面から指数を見たときに分配面の動きが乖離すること、2つ目は現行指数と比べて景気の山谷が把握しにくくなる可能性があること、3つ目は山谷の判定基準は従来型の手法を踏襲していいかという点、4つ目は現行指数と並存することによる新しい指数の位置づけの分かりにくさである。

③4つの課題を巡る両氏の議論において、新しい指数は、現行指数と比較して改善されたと考えられるものの、景気循環の把握という点では検証の余地があり、分かりやすさの確保も検討課題である点で見解が一致した。増島氏によると、今後、新しい指数は参考指標としての利用を促進しながら、データ蓄積及びユーザーの意見を踏まえ、改善する方針という。