<日経センター中国研究> (第2回)

習近平政権下の米中関係と台湾問題―ロシアのウクライナ侵攻後の行方

松本はる香・ジェトロ・アジア経済研究所地域研究センター東アジア研究グループ長
聞き手)湯浅健司・日本経済研究センター首席研究員
開催:
09月22日(木) 14:00~15:00
会場:
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*収録動画の配信期間:12月21日まで

■講師略歴
(まつもと はるか) 2003年米ジョージタウン大学大学院歴史学部外交史専攻修了、18年東京女子大学大学院人間科学研究科歴史文化研究領域博士後期課程修了(博士)。03年日本国際問題研究所研究員、05年日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員などを経て、20年から現職、21年主任研究員を兼務。専門は、東アジア国際関係史、中国外交、台湾をめぐる国際関係。編著書に『〈米中新冷戦〉と中国外交ー北東アジアのパワーポリティクス』(白水社、2020年)など

■要旨
民主主義と権威主義の狭間の台湾―米中対立の長期化避けられず

①今年2月に始まったウクライナ侵攻が台湾問題にも影響を及ぼしている。台湾問題を「核心的利益」と位置づけ、内政問題として第三者からの影響を排除したい習近平政権と、政権発足以降、台湾に対するコミットメントを強化している米国バイデン政権による米中対立はより厳しさを増しており、今後も中長期的に継続するものと考えられる。

②冷戦時代から今日まで、台湾海峡においては米国が中国と台湾の間に入ることで、双方が攻撃を仕掛けない「二重の抑止」の構図が成り立ってきた。それによって、国際環境の変化にも関わらず中台が交戦しない台湾海峡における「現状維持」の状態が保たれてきた。

③そのような中での8月のペロシ米議会下院議長の台湾訪問は、中国の猛烈な反発を招き、結果として東アジアの国際情勢の不安定化へとつながった。しかし、台湾情勢がこれほどまでに悪化した背景には、中国の香港の民主化弾圧に対する国際社会の反発がある。その結果として、台湾の民主主義への支持が集まり、世界各国の政府高官の訪台が増えているものと考えられる。ペロシ訪台以降、民主主義と権威主義の対立の構図は米中台関係に今後も影響を及ぼしていくだろう。