欧州のエネルギー危機とドイツ政治 ―2年目迎えるウクライナ侵攻

岩間陽子・政策研究大学院大学政策研究科教授
聞き手)刀祢館久雄・日本経済研究センター研究主幹
開催:
02月21日(火) 14:00~15:00
会場:
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*収録動画の配信および、資料の掲載はございません

■要旨
「時代の転換点」ドイツの政策変える―ロシアに裏切られた新東方外交

①ロシアのウクライナ侵攻後、ドイツがエネルギー政策の中心に据えてきたロシアからの天然ガスパイプラインがほぼ停止した。ドイツの政策は欧州のエネルギー危機と同時に歴史的な転換点を迎えた。パイプラインはドイツの現与党、社会民主党が半世紀以上続けてきた融和政策「新東方外交」による独ソ・独ロ友好の証であり、ロシアのウクライナ侵攻によりこれまでの外交努力が否定された。これを受けてオラフ・ショルツ首相は安全保障政策の大転換に踏み切った

②ウクライナの戦局は膠着し、休戦・終戦は見えていない。同国支援でドイツは米国のコミットメントと、NATO同盟国との協調を重視。今後のNATOとロシアの戦争勃発といった最悪のエスカレーションシナリオを回避すべく、同盟国全体で対処したい姿勢だ。安全保障上、法に基づく多極世界を目指すうえで、中国やグローバルサウスを取り込んでいく必要がある。

③ドイツは環境問題でもグローバルサウスを取り込み、世界のエネルギー転換を先導・加速させようと、2022年のG7では産業界のグリーン化を目指す「気候クラブ」の設立を主導した。ロシアの天然ガスパイプラインに頼った過去のエネルギー政策から脱却し、水素の活用はじめ将来に向けた投資を積極化している。次世代のエネルギー覇者となれるか、挑戦が進んでいる。

 ■講師略歴
(いわま ようこ) 京都大学法学部卒業、同大学大学院博士後期課程修了(博士[法学])。在ドイツ日本国大使館専門調査員、政策研究大学院大学助教授などを経て、2009年から現職。専門は国際政治、欧州安全保障。著書に『核の1968年体制と西ドイツ』(有斐閣、2021年、猪木正道賞正賞受賞)、『冷戦後のNATO―”ハイブリッド同盟”への挑戦』(共著、ミネルヴァ書房、2012年)、『ドイツ再軍備』(中公叢書、1993年)、など