- 開催:
- 03月16日(木) 14:00~15:00
- 会場:
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*収録動画の配信期間:2023年6月15日まで
■要旨
日本は「自由貿易の旗手」捨てるな―経済安全保障と両立を
①自由貿易体制は、世界貿易機関(WTO)の多国間体制が基礎で、その上にFTA(自由貿易協定)などの地域貿易協定がある重層構造だ。これが弱体化しているのは、①多国間自由貿易体制の衰退②米中デカップリング(分断)と安全保障・通商の接近③サプライチェーン危機――が原因だ。
②米国主導による「フレンドショアリング」は、価値観を共有し、安全保障で信頼のおけるパートナーとサプライチェーンを構築・強靭化する考え方だ。インド太平洋経済枠組み(IPEF)や米EU貿易技術評議会、(TTC)が代表的で、経済安全保障を意識したアジェンダ設定が特徴だ。
③こうしたフレンドショアリングの課題は、関税引き下げなどの市場アクセスの約束がなく、協力ベースでの合意や目標にとどまるため、具体的成果と利益が不明確な点で、成否も見通せない。グロ―バスサウスの途上国を置き去りにする懸念もある。日本はフレンドショアリングに過度に依存せず、多角的通商体制を維持するために「自由貿易の旗手」としてリーダーシップを発揮すべきだ。WTO改革、環太平洋経済連携協定(TPP=CPTPP)の維持・拡大、EUとの大連携などを目指したい。
■講師略歴
(かわせ つよし) 1994年慶応義塾大学大学院法学研究科後期博士課程中退、米ジョージタウン大学法科大学院修了。神戸商科大学(現・兵庫県立大学)助教授、経済産業省通商機構部参事官補佐、(独)経済産業研究所研究員、大阪大学大学院准教授などを経て、2007年から現職。(独)経済産業研究所ファカルティ・フェロー、産業構造審議会特殊貿易措置小委員会委員長を兼務。専門は国際経済法。