アジア新興国 ―地政学と地経学の注目点

高橋徹 ・日本経済新聞社編集委員・論説委員
聞き手)伊集院敦・日本経済研究センター首席研究員
開催:
03月28日(火) 14:00~15:00
会場:
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*収録動画の配信期間:2023年6月27日まで

 ■講師略歴
(たかはし とおる) 1992年横浜国立大経営学部卒、日本経済新聞社入社。主に産業取材を担当した後、2010~15年にバンコク支局長、19~22年にアジア総局長として2度、計8年間タイに駐在。22年4月から現職。著書「タイ 混迷からの脱出」で16年度の大平正芳記念特別賞受賞

■要旨
外交・軍事と経済の一体化進む―問われる大国インドの仲介力

①米国はアジアに日本、韓国、豪州、フィリピン、タイの5つの同盟国がある。米国政府は有事の際、同盟国を足場にして物理的な展開ができる。一方、中国には同盟国がない。そこでアジア各国で港湾などのインフラ投資をする時、いざとなれば軍事的に利用するというような意図が透けて見える。中国政府はアジア戦略を論じる時、あえて外交・軍事と経済を分けていない。

②東南アジア諸国連合(ASEAN)は反共同盟からスタートしているため、中国は脅威として認識されていた。一帯一路政策などで支援も増えているが、ASEAN諸国は、米国は安保協力、中国は経済協力と使い分けてきた。しかし、日米豪印の協力枠組みである「QUAD」が経済協力から外交軍事協力にシフトしているように、最近、外交・軍事と経済の議論が一体化してきた。

③アジアは主要国で総選挙が相次ぐ内政の季節に入った。しかし、中国寄りとみられているカンボジアで7月の総選挙後、フン・セン首相が米留学経験のある息子に首相の座を譲る見込みであるなど、地域全体で内政と外交との関連性が強くなってきた。そうした中、中国と並ぶ大国として台頭してきたインドが自国の利害を超え、国際社会でどこまで仲介役を果たせるのか注目される。