- 開催:
- 04月07日(金) 14:00~15:30
- 会場:
- 日本経済新聞社東京本社ビル 6階セミナールーム2
*収録動画の配信は終了しました。
■講師略歴
(わたなべ つとむ) 1982年東京大学経済学部卒、日本銀行入行。92年ハーバード大学Ph.D.(経済学)。 一橋大学経済研究所教授を経て、2011年から現職。ナウキャスト創業者・技術顧問。 『物価とは何か』で22年度・第65回日経・経済図書文化賞受賞。 近著に『世界インフレの謎』
■要旨
輸入インフレで脱デフレが可能に―好循環維持へ規制価格撤廃を
①日本経済は1995年ごろから消費者物価指数(CPI)がほぼゼロ%の近傍で推移してきた。いわゆる慢性デフレである。この間、米国では3%程度のインフレが続いてきた。一応2%が日米そして欧州も含めた物価上昇率目標になっており、その辺がちょうど良い水準だと考えてられている。米国は悪くない水準だったが、日本は低すぎたと言える。
②慢性デフレの問題点は、それが価格メカニズムの崩壊を意味するからだ。企業が値段を上げられないと非価格競争が起き、ムダが生まれ効率が落ちる。また、賃金が上がらないと一生懸命働いても収入が増えず、労働者は余り働こうと思わなくなり、労働生産性が落ちてしまう。日本ではそうした状態が25年間続いたために、経済成長が阻害されてしまった。
③日本では2022年春ごろから輸入物価の上昇をきっかけに、物価は上がるものと考える人が増え、値上げを受け入れる消費者が増加した。一方で生計費の上昇が賃上げ圧力を生み、物価と賃金の好循環が生まれた。しかし、来年以降も輸入インフレが続くとは限らない。この好循環を維持するために公的年金の完全な物価スライドや規制価格の撤廃などの政策対応が望まれる。