少子化対策、本質突けるか-未婚化など克服へ中身問う

山田昌弘・中央大学文学部教授
開催:
05月23日(火) 14:00~15:00
会場:
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*収録動画の配信は終了しました

■要旨
結婚の支援が最重要、現実直視を―欧米型適用や育児支援では不十分

①日本で少子化が認識されるようになったのは1990年からだが、30年放置されたような結果となり、急速に子どもの数が減るようになった。少子化が始まった当初は子どもの数があまり減らないこともあって政府・国民があまり関心を持たなかったほか、政府の対策が、欧米で効果があったとされる子育て支援策が中心で、日本にはうまく当てはまらなかったといえる。

②少子化の直接の原因は未婚化の進展である。4分の3の人が結婚してほぼ2人の子どもを持つ一方、4分の1の人が結婚しないという構造が約30年続いている。結婚まで親と同居し、女性の働きがいがある職場が少なく、恋愛感情よりも経済生活、子どもの将来が優先されるといった傾向の日本では、両立支援を中心にするだけでは少子化対策は効果が出ないだろう。

③少子化対策の成否は結婚の支援にかかっており、今の収入が不安定な男性が結婚しやすくなるような対策が重要といえる。男女共同参画をさらに推進する、多様な家族を認める、社会保障により子育てを経済面で下支えするといった施策が必要になるが、今の状態では国民が皆で少しずつ貧しくなっていくのを受け入れているようにもみえる。

■講師略歴
(やまだ まさひろ)1981年東京大学文学部卒。86年同大学院社会学研究科博士課程退学。東京学芸大学教授を経て、2008年より現職。内閣府・男女共同参画会議民間議員、東京都社会福祉審議会委員など公職を歴任。専門は家族社会学。著書は「パラサイト・シングルの時代」(ちくま新書)、「少子社会日本」(岩波新書)、「日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?」(光文社新書)など多数。