- 開催:
- 06月16日(金) 11:00~12:00
- 会場:
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*収録動画の配信は終了しました。
■講師略歴
(いけうち さとし) 2001年東京大学大学院博士課程単位取得退学。国際日本文化研究センター准教授、東京大学先端科学技術研究センター准教授などを経て、2018年から現職
■要旨
イスラエルが湾岸諸国の後ろ盾に─米政権、中東への関与弱める
①中東諸国の関係に構造的な変化が見え始めた。サウジアラビア、イラン、トルコ、アラブ首長国連邦(UAE)、イスラエルなどの間で、敵対関係でもなく、かといって友好関係でもないが、相互に間合いを見計らいながら接近する形で自生的な地域の秩序が生まれつつある。米国の影響力が少なくとも外見上目立たなくなる一方、中国がこの地域で外交力を示すことに成功している。
②現在の中東の指導者は世代交代と環境制約の2つの問題を抱える。湾岸産油国では近代国家を作り上げた世代が高齢化しておカネ持ちとして生まれついた人たちが後継者になり、イランでも革命から40年を経て革命世代が交代期を迎えている。また湾岸諸国は豊富な石油資源で電気を作りクーラーと海水淡水化技術で繁栄を維持しているが、これが生活基盤の脆弱性ともなっている。
③米軍のアフガニスタンからの撤退などが、いざという時に米国がどこまでこの地域に関与してくれるのかとの疑念を中東諸国に与えた。そこで湾岸諸国がイランに対抗するための米国に代わる後ろ盾として頼ったのがイスラエルだ。これによりサウジアラビアはイランと対等に国交回復交渉ができた。イスラエルは、覇権意識を高めていたトルコへの包囲網をつくることにも成功した。