インドの「グローバルサウス」戦略と日本

伊藤融・防衛大学校人文社会科学群国際関係学科教授
聞き手)山田剛・日本経済研究センター主任研究員
開催:
06月21日(水) 14:00~15:00
会場:
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*収録動画の配信は終了しました。

■講師略歴
(いとう とおる) 中央大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。在インド日本国大使館専門調査員などを経て2009年から防衛大学校勤務、21年より現職。インドや南アジアの国際関係に関する著作多数。

■要旨
「日米欧」と「中ロ」両にらみ外交―国内の強権リスク踏まえ、日印対話の強化を

①近年、「世界大国」路線を採ってきたインドが途上国側に立って「グローバルサウス」を掲げるのは一見すると不自然だが、これは経済制裁下のロシアから公然と原油や肥料を輸入するための建前と解釈すると腑に落ちる。さらに、来る9月の20カ国・地域(G20)首脳会談において共同声明という成果をあげるために、中国・ロシアが納得しやすい枠組みを主張したいという思惑も見て取れる。

②インドは地理的に世界通商の要であり、また経済的にも軍事的にも年々存在感を高めている。米中の勢力が均衡すると、第3番手の勢力であるインドの行動がインド太平洋地域の国際秩序の帰趨を決することとなろう。岸田首相はモディ政権に配慮して「グローバルサウス」に共鳴し、大国インドを自陣営に引き寄せる姿勢を示した。

③日本国内では関心を集めていないが、一方的な政治決定や反対派の弾圧など、民主主義の退行といえる事態がモディ政権下のインドにおいて認められる。インドが自由と民主主義から遠のけば、日印協調の政治的・経済的な意義が薄れることになりかねない。日本はインドの対話相手として欧米よりも適任であり、同国を自由・民主主義陣営に引き留める役割を演じるべきだ。