欧州の環境覇権ー世界を変える気候・エネルギー戦略

竹内康雄・日本経済新聞社政策報道ユニット経済・社会保障グループ次長
聞き手)刀祢館久雄・日本経済研究センター研究主幹
開催:
08月25日(金) 14:00~15:00
会場:
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*収録動画の配信は終了しました。

■講師略歴
(たけうち やすお) 日本経済新聞社政策報道ユニット 経済・社会保障グループ次長。慶應義塾大学文学部卒業、ベルギーのルーヴェンカトリック大学(KU Leuven)大学院修了(欧州研究)。2002年日本経済新聞社入社。主に経済産業省や内閣府などを取材し、12~17年パリ支局長、19~23年にブリュッセル支局長。4月から現職。

■要旨
巨大市場テコにルール形成を主導―日本の活路は独自技術の活用

①欧州では有権者の意識の高さが要因となって環境問題が政治の中心になった。欧州連合(EU)は巨大市場を背景に、通商権限を武器にして域内政策をグローバルスタンダードにしようと動いている。2050年の温暖化ガス排出を実質ゼロにする目標やカーボンプライシングの導入、自由貿易協定(FTA)への環境関連章の盛り込みなど、環境分野で欧州は世界の先頭を走っている。

②戦略的自立を掲げ、再生可能エネルギー拡大や重要物資の調達増による経済安全保障の強化を図る。循環社会への移行に向け、プラスチック削減やバッテリー材料のリサイクルにも取り組む。米国との間には対中姿勢で温度差がある。米インフレ抑制法による環境分野への巨額支援で、環境産業の供給網が米国に移るのではないかとの懸念もある。

③日本では、欧州と比べて有権者の環境への意識が低いが、2050年の排出量ネットゼロの実現には従来政策の強化に加え、個人単位の行動変容が求められる。また、欧州の政策を取り入れるだけでなく、高い技術力を活かした独自性を打ち出す必要性もあろう。