「重要鉱物」は安定調達できるか―脱炭素時代の世界的難題

久谷一朗・日本エネルギー経済研究所研究理事
開催:
08月31日(木) 14:00~15:00
会場:
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*収録動画の配信は終了しました。

■要旨
輸入相手分散・代替技術がカギに─地理的偏在性や供給力にリスク

①脱炭素社会の実現に向けて、再生可能エネルギーや蓄電池などクリーンエネルギー技術が普及する見通しだが、クリーンエネルギーシステムの製造過程ではリチウムやニッケル、コバルトなど多くの重要鉱物が使われる。重要鉱物の必要性が今後増していくなか、戦略物資として利用されて供給危機が起こるリスクが残念ながら存在する。

②重要鉱物を巡るリスクには主に2つの要因がある。地理的偏在性と供給力そのものの不確実性だ。地理的偏在性は鉱石生産と下流工程の両方に見られ、特に下流工程では中国の存在感が強い。重要鉱物の需要が急速に増えると、供給力が需要に追い付かない懸念も鉱物によっては高まる。欧米なども重要鉱物のリスクを認識して対策に乗り出している。

③日本も重要鉱物確保に向けた政策を幅広く展開しており、省資源・代替資源などの技術開発や輸入相手国の分散化による資源確保策などが、今後の方向性となるだろう。信頼できる国々に生産を依頼するなどの関係強化のほか、公正な国際貿易ルールづくりなどにも努め、リスクが低減されていくことを望みたい。

■講師略歴
(くたに いちろう)1995年早稲田大学大学院理工学研究科機械工学専攻修了。機械工学修士。日本鋼管(現 JFEエンジニアリング)入社、2007年に日本エネルギー経済研究所に入所、23年7月より現職。専門はアジア地域を中心としたエネルギー安全保障政策。著書に「国際エネルギー情勢と日本」(エネルギーフォーラム新書、共著)など。富山県出身。