少子化対策を問い直すー日本に欠けているもの

村上芽・日本総合研究所創発戦略センター エクスパート
聞き手)刀祢館久雄・日本経済研究センター研究主幹
開催:
09月01日(金) 11:00~12:00
会場:
---

*収録動画の配信は終了しました。

■講師略歴
(むらかみ めぐむ) 京都大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)を経て、2003年日本総合研究所入社。10年から創発戦略センター所属。企業のESG(環境・社会・ガバナンス)調査、SDGs、環境と金融を専門分野とし、現在の注力分野は「サステナビリティ人材育成」と「子どもの参加」。著書に『少子化する世界』『SDGs入門』など

■要旨
人口より「生きやすさ」重視の政策を─満足度向上の出生数への影響を検討すべき

①日本の少子化対策は1990年代から本格的に始まったが、出生率は低迷し続けている。最近は希望出生率も低下しており、空回りしている印象だ。2022年からは方向性に変化が見られるものの、国民の期待度は低く国との間に温度差がある。

②一方、欧州の先進国では、出生率は日本同様に低下したものの、出生数は同水準を維持できている国が多い。子育て先進国のスウェーデンをはじめ、両立支援や格差を是正する政策が積極的に行われている。ジェンダー平等や子どもの権利を保障することが、結果として有効な少子化対策になっている。

③日本に必要なのは、政策目的を明確にすること、そして、少子化対策を「人口」と「生きやすさ」に分けた議論だ。人口減少のデメリットのみならずメリットについても幅広く定量評価を行い、国民に説明するべきだろう。また、経済規模のみを追求するのではなく、今を生きる1人ひとりにとって満足度の高い社会にすることで、少子化に歯止めをかけることができると考えられる。