<日経センター中国研究> (第3回)

中国「AI2.0」の潮流とその実力

高口康太・ジャーナリスト、千葉大学客員准教授
聞き手)湯浅健司・日本経済研究センター首席研究員
開催:
09月21日(木) 14:00~15:00
会場:
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*収録動画の配信期間:2023年12月20日まで

■講師略歴
(たかぐち こうた) 2008年北京五輪直前の「沸騰中国経済」にあてられ、中国経済にのめりこみ、企業、社会、在日中国人社会を中心に取材、執筆を仕事に。「クローズアップ現代」「日曜討論」などテレビ出演多数。主な著書に『幸福な監視国家・中国』(NHK出版、梶谷懐氏との共著)、『プロトタイプシティ 深圳と世界的イノベーション』(KADOKAWA、高須正和氏との共編)で大平正芳記念賞特別賞受賞

■要旨
中国AI進む社会実装と課題─カギを握るのはマネタイズ戦略

①中国は「AI2.0」という新しい時代に投入した。「Chat(チャット)GPT」の登場を皮切りに、人工知能(AI)における米中競争は再び過熱し、ビジネス界の著名人や研究機関、事業会社が軒並み大規模言語モデルの開発に手を挙げ、2023年上半期に100以上のモデルがリリースされた。

②中国における生成AIブームは、かつての「殺到する経済」と批判的に見られたものとは異なり、多くのスタートアップが競争し、生き残り、業界全体の向上を促す「多産多死」のエコシステムを形成している。そうしたダイナミズムの中で生き残った高度なAI人材と企業が、AIの社会実装を進め、人々の生活に身近なサービスとなっている。

③中国におけるAIの課題は、政府の介入と米中対立である。AI規制の厳格化やGPUの販売制約などの存在が、技術進歩のスピードを緩めるリスクがある。また全世界共通の生成AIの課題としてマネタイズの難しさがある。かつての中国の「AIの冬」の引き金となったマネタイズ戦略の今後の主戦場となるのは、事業分野・会社別のソリューションである。利益を生み出す仕組みと汎用型大規模言語モデルの開発が中国におけるAIの突破口になるだろう。