<グローバル危機に聞く>
資本主義の未来、会社の本質とは

岩井克人・東京大学名誉教授、神奈川大学特別招聘教授
開催:
09月22日(金) 14:00~15:30
会場:
日本経済新聞社東京本社ビル 6階会議室

*収録動画の配信期間:2023年12月21日まで

 ■講師略歴
(いわい かつひと) 東京大学卒業、マサチューセッツ工科大学経済学博士(Ph.D.)。イェール大学経済学部助教授、プリンストン大学客員準教授、ペンシルバニア大学客員教授、東京大学教授、国際基督教大学特別招聘教授などを歴任。2007年紫綬褒章。15年日本学士院会員、16年文化功労者に選出。著書に『会社はだれのものか』など。
研究分野:資本主義論 貨幣論 不均衡動学 進化論経済学 会社論 信任論 思想史

■要旨
米国型資本主義の誤謬 ―持続可能な社会の実現に向けて

① 世界は第一次、第二次グローバル化を経て、第二次グローバル化の修正期に突入している。1980年以降の自由放任主義に基づく米国型資本主義は不平等を拡大させ、政治的経済的分断を引き起こしている。近年では中国やロシアなどグローバル化自体に対する敵対国が生まれ、国家主導型の資本主義が代替案として注目されていたが、その脅威は限定的だろう。

② 資本主義は転換点を迎えており、日本はグローバル化の修正期において、米欧以外で初めて近代化した国として民主主義、法の支配、経済的自由の普遍的価値を示す役割を果たすべきである。また、資本主義を維持するためには、利潤追求だけでなく温暖化対策や貧困支援などを含むSDGs(持続的な開発目標)を組み込む試みが必要となる。

③ 米国型資本主義における株主主権論は会社の構造を誤認しているが、本来会社(法人)とはヒトとモノの両義的な性質をもったものであり、2つのバランスによって会社は多様な経済組織形成を可能にする。会社は会社資産の所有者(ヒト)として株主の意思とは独立した目的を持つことができ、それにはSDGsも含まれる。