ポスト「例外主義」の米国─トランプ現象と民主主義の行方

三牧聖子・同志社大学グローバル・スタディーズ研究科准教授
開催:
10月04日(水) 14:00~15:00
会場:
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*収録動画の配信期間:2024年1月3日まで

■要旨
「自由」や「寛容」、取り戻せるか─揺らぐ社会、体制間競争にも影響

①「米国が圧倒的なパワーを持って世界に介入する」といった「例外主義」が終わりつつあるという認識を、大統領だけでなく米国民も共有している。米国の政治制度や社会保障システムについて「誇りに思わない」という国民は多い。若い世代には米国の単独主義的な行動を否定しつつ、諸国家との対話や協調を重視する姿勢がみられる。

②民主主義のお手本を自認してきた米国で、「選挙を通じた平和的な政権移行」という民主主義の根幹への信頼が揺らぐ事態が起きている。トランプ前大統領の支持者らによる2021年の議事堂襲撃事件や関連した動きは、中国の攻撃・宣伝材料になり、体制間競争にも影響している。共和党が強い州を中心に厳格な中絶制限が行われるなど、人権で国際潮流に逆行する動きもある。

③価値の分断や党派対立が進み、バイデン政権も移民・難民政策で「寛容」を前面には打ち出しづらくなっている。中国やロシアなどの権威主義国家が力を持つなか、米国が「自由」や「寛容」といった民主主義の諸国家にとって重要な価値を取り戻していけるのかを、我々は注視する必要がある。

■講師略歴
(みまき せいこ)1981年生まれ。東京大学教養学部卒業、同大学院総合文化研究科博士課程修了。米ハーバード大学日米関係プログラム・アカデミックアソシエイト、高崎経済大学准教授などを経て現職。専門はアメリカ政治外交。著書に『戦争違法化運動の時代』(名古屋大学出版会)、近著に『Z世代のアメリカ』(NHK出版)。