日銀の政策、後手に回るリスクは

関根敏隆・一橋大学国際・公共政策大学院教授
聞き手)左三川郁子・日本経済研究センター主任研究員
開催:
10月06日(金) 11:00~12:00
会場:
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*収録動画の配信期間:2024年1月5日まで

■講師略歴
(せきね としたか) 1987年東京大学経済学部卒、日本銀行入行。国際通貨基金出向、調査統計局長、金融研究所長などを経て、2020年から現職。オックスフォード大学経済学博士。専門は金融政策、マクロ経済。

■要旨
物価目標達成なら金利2%も─インフレ形成過程に変化

①インフレの形成過程が変わってきており、物価安定目標達成の可能性も高まっている。除く食料・エネルギーでみた消費者物価は足元で伸び率を高めており、品目ごとの物価上昇率の分布を見ても上昇している品目が増えていることがわかる。正規労働者の所定内賃金も上昇しており、賃金の形成過程にも変化がみられる。

②今回の物価上昇は新型コロナウイルス感染症の流行とウクライナ危機がきっかけであり、家計も物価上昇に対しては「仕方ない」という気持ちがあるのではないか。また、労働供給の天井が近づいていることや、労働分配率が下がってきていることを考えると、まだ賃金上昇の可能性がある。

③日銀もインフレ形成過程の変化に気づいていると思われるが、まだ自信を持てていない。テイラールールを計算すると足元が上がっており、日銀が金融正常化において後手に回るリスクが高まっているとみることもできる。日銀の予想している姿が実現すれば金利は2%も視野に入るが、それでも金利が調整されなければ後手に回るリスクが非常に高まる。