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日本経済研究センター Japan Center Economic Research

最終更新日:2010年7月13日
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日本経済研究センターからのお知らせです

政策課題を活発に議論−マクロモデル研究会開催

 7月2日、3日の両日、センター内で「マクロモデル研究会」を開催した。大学や官庁、民間機関の計量分析の専門家が一同に集まり、最新の研究成果を報告する会議で、センターでは2007年度から毎年この時期に開催している。両日合わせて50人を超える研究者が集まり、活発な議論を繰り広げた。

 今回の特徴は日本経済がまさに直面している政策課題に答えようとする分析が目立ったことだ。財政、金融、成長戦略、環境など多彩な分野からの報告が並んだ(プログラム参照)。



 財政では、日本の政府債務残高のGDP(国内総生産)比は先進国で最悪、放置すればギリシャ危機の二の舞にもなりかねない「リスク」を抱える。財政の持続可能性を高めるにはどうすればよいのか。上田淳二氏(京都大学)は、年金・医療などの社会保障支出に人口減・高齢化要因を織り込み、他の支出や税収などはGDP比横ばいとの想定を置いた上で、財政収支の見通しを描き、2050年度の債務をGDP比60%に圧縮するには、同8〜10%に相当する収支改善が必要との分析を紹介した。

 いかに停滞から脱し、日本経済の成長を底上げするかも重要な課題だ。篠ア彰彦氏(九州大学・日本経済研究センター)はIT(情報技術)を通した生産性引き上げという観点から、2020年までの成長軌道を分析した。法人税率の引き下げやIT投資の加速などの条件を織り込むと、標準シナリオでは1%強の成長率が0.5%ポイント程度高まるとの当センター「情報経済研究報告」(09年度)での分析を報告した。

 研究会2日目は「環境」を統一テーマに議論。特に「地球温暖化対策に係る中長期ロードマップ(環境大臣試案)」に盛り込まれたモデル試算を紹介する特別セッションを設けた。

 伴金美氏(大阪大学)は、企業や家計が将来の変化を見越し、早めに行動を起こす「フォワード・ルッキング」型のCGE(応用一般均衡)モデルを用いた分析を紹介。CO2の価格付けにより化石燃料価格が上昇した場合、省エネ投資を前倒しで行うのが望ましい。同時に、企業や家計が低炭素嗜好を強め、太陽光発電やエコカーなどへの支出比率を高めるという条件を加えると、投資の活発化と家計の省エネ効果拡大で、GDPが改善すると報告した。

 当センターの蓮見亮研究員らは、マクロ計量モデルによる環境税の分析を紹介した。CO21トンにつき1万円あるいは2万円といった税を課すことを考える。この場合、税収を全額政府支出に回せば、課税効果で民需が落ちる効果を、政府支出がカバーしGDPは改善する。半面、税収を社会保険料の減額に使うのでは、押し上げ効果が限られ、GDPは悪化する。どちらも同額の所得底上げを図っている点で変わりがないが、一方は、政府支出そのものがGDPの構成要素になっているために効果が大きく見える。政府支出として使い道を政府が決めてしまうことは、経済資源の浪費を招く恐れもあると注意を喚起した。

 落合勝昭副主任研究員は、温暖化ガス削減の政府目標に関わる一連のモデル試算がどのような経緯で進められてきたかを解説した (資料)。試算は麻生政権下から始まったが、(1)民主党政権になって、25%削減が先に決まり、後で分析を加える後追い型になった、(2)環境大臣試案にどんな試算を採用するかについても恣意性が見受けられた――などを、問題点として指摘した。

 このほか、稲田義久氏(甲南大学)らは、マクロ計量モデルを用いて、(1)炭素1トン当たり1万円(CO21トン当たり2727円)の炭素税をかけた場合、実質GDPは最大0.9%悪化(税収還元なし)、(2)技術効率の改善を見込んだシナリオでは2020年のGDPは0.4%改善――などの試算結果を示した。

 白井大地研究員らは、CGEモデルを用いた新エネルギーの全量買取制度の分析を紹介した。発電コストの高い太陽光のような新エネを全量買い取りで導入すると、コストの安いものから順に導入することを想定したケースと比べて、GDPが悪化することを示した。政府が検討中の買い取り案は、政府が直接、技術選択に関与し価格も統制するなど、市場取引を歪める恐れが強いと警鐘を鳴らした。

 当センターでは本研究会を今後も定期的に開催する予定で、ここで得た知見や人的ネットワークを、当センターが今年度取り組んでいる「研究プロジェクト−25%削減時代の日本経済」など今後の研究に生かしていく考えだ。(研究本部)

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【関連リポート】
「1トン1万円のCO2課税で、排出量は5%減に−税収の使途により経済影響は変化(マクロ計量モデルによる分析)」(日本経済研究センター、2010/4/1)
「新エネの全量買い取り、市場にひずみ大きく−「グリーン成長」「CO2削減」とも費用対効果に疑問」(日本経済研究センター、2010/5/24)

<マクロモデル研究会プログラム>

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