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関西経済に焦点、多様なモデルの応用も―マクロモデル研究会を大阪で開催

 2016年9月9日、10日の両日、「マクロモデル研究会」を開催した。計量分析の専門家が一堂に集まり、最新の研究成果を報告する会議で、2007年度から当センターが事務局となり毎年開催している。今回はアジア太平洋研究所(APIR)との共催で2年ぶりに大阪を会場とした。10回目となる今回は両日合わせて8件の報告があり、約30人の参加者が活発な議論を繰り広げた。内容は地元の関西経済に焦点を当てた研究が目立ったほか、産業連関表や時系列モデルなど、多様なモデルの応用例の報告があった。

関西再興の戦略を探る

 今回は大阪開催ということもあり、地域経済を1つのテーマに取り上げた。口火を切ったのは当センターの猿山純夫・首席研究員。2015年度の産業研究班の成果から、人口が集まる地域の特徴とそれを踏まえた都道府県予測を紹介した。関西の大黒柱である大阪は30年までの成長率が全国7位にとどまる見通し。事業所サービスなど都市型産業の立地で優る東京が2位、輸送機械に強みを持つ愛知が3位を占めたのに比べ、成長分野に乏しい点が関西経済の制約になっていると指摘した。

 入江啓彰氏(近畿大学)は関西経済(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山の2府4県)の中期展望として関西版再興戦略を提示、域内総生産(GRP)100兆円への道筋を計量モデルのシミュレーションにより示した。他地域に比して停滞が続く関西は、現状を延長したベースラインケースでは地盤沈下が進む一方、需要・供給の両サイドに適切な施策を講じた経済再生ケースでは20年度までに全国シェアで見た「16%経済」から脱却できるという。

 木下祐輔氏(アジア太平洋研究所)は欠員率と失業率の関係(UV曲線)、および失業率と賃金の関係(賃金版フィリップス曲線)を用い、関西地区の構造失業が賃金に与える影響を分析し全国と比較した。関西の構造的・摩擦的失業率は全国より0.5〜0.8%ポイント高く、これが全国並みに下がると関西の賃金が約0.5%ポイント上昇する。ただ、関西は失業率が低下しても賃金に反映されにくい構造要因もあるという。

 産業連関表を用いた地域経済の分析も2件報告があった。下田充氏(日本アプライドリサーチ研究所)らが焦点を当てたのは、訪日外国人のインバウンド消費。関西地域間産業連関表で分析すると、関西圏GRPに対する同消費の寄与は15年に前年の1.73倍に高まったという。府県別では京都、大阪への恩恵が大きく、兵庫では限定的だったと報告した。

 山田光男氏(中京大学)は、国際分業における中部圏の役割がどう変わったのか分析した。独自に中部圏の表と国際産業連関表を連結し、2005〜10年の変化を洗った。資材調達プロセスを追う「後方連関効果」を見ると、国内他地域や東アジアからの投入が増えた。中部圏の生産物の販売先を追う「前方連関効果」は、中国などの需要拡大がプラスに働いたものの、機械系の業種では海外や他地域がグローバル調達を活発化したために、中部圏からの投入を削減する傾向が見られたという。




確率モデルを用いた分析も

 時系列モデル、ないし確率モデルを応用した研究成果の報告もあった。松林洋一氏(神戸大)は開放経済の枠組みから自然利子率(完全雇用下で貯蓄と投資を均等化させる均衡金利)の低下の要因を分析した。世界実質金利はグローバルな自然利子率とも解釈でき、その低下は不況の長期化と物価の下落をもたらす。グローバルなパネルVAR(ベクトル自己回帰モデル)分析によると、世界実質金利の低下傾向は各国の投資低迷に起因することが明らかになった。

 浜田文雅氏(慶應義塾大学)は、通常のマクロモデルでは分離できない政府消費と公共投資の乗数を、企業の内部留保も取り込んだ形のVARモデルによって推定した。その結果、政府消費の乗数は公共投資よりも明確に大きいことが分かったという。これをもとにアベノミクスの目標である国内総生産(GDP)600兆円実現のため、政府消費の過半を占める社会保障給付の計画的な増やし方も示した。

 当センターの宮ア孝史副主任研究員は、景気後退確率を算出し、景気の早期シグナルとして役立てる試みを紹介した。確率モデル(マルコフ連鎖)を景気動向指数の先行指数と組み合わせた。試算した景気後退確率は、内閣府が認定する景気の「山」の到来を早めに察知でき、政策発動のタイミングを考える上で重要な情報を提供できるという。



 当センターはAPIRとの共催で本研究会を今後も開催する予定で、ここで得た知見や人的ネットワークを、今後の研究に生かしていく考えだ。
(研究本部)

*本研究会は、当センターの猿山純夫首席研究員、門多治特任研究員のほか、稲田義久・甲南大学教授、千田亮吉・明治大学教授らが幹事として 運営に当たっている。また、本研究会では発表テーマをマクロモデルに限定せず、統計や景気指標、あるいは予測手法などの周辺分野も取り上げている。

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