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齋藤潤の経済バーズアイ (第137回)

2023年4~6月期QEが示していること

 

2023/09/01

【予想よりも強かった実質GDP成長率】

 2023年4~6月期のGDPに関する一次QEが8月15日に発表になりました。これによると、2023年4~6月期の実質GDP成長率は、季節調整済前期比で1.5%、同年率で6.0%と高いプラス成長となりました。内訳をみると、このようなプラス成長が、国内需要(以下、内需)の寄与度は-0.3%ポイントであったものの、純輸出(外需)の寄与度が1.8%ポイントと大幅なプラスであったことによってもたらされたことが分かります。この結果、実質GDPは3四半期連続のプラス成長となりました。これは2019年の1~3月期から7~9月期にかけて見られて以来のこととなります(第1図)。

 一次QEが発表になる前の民間予測では、概ねもっと弱めの成長率が予想されていました。例えば、日本経済研究センターが公表しているESPフォーキャスト調査の8月調査結果(民間エコノミスト36人の予測を集計したもの)を見ると、予想された実質GDP成長率の平均は、季節調整済前期比で0.59%、年率で2.41%となっていました。内訳をみると、民間予測は、内需については楽観的に、外需については悲観的に見ていたようです(第2図)。

【内需の弱さは民間消費に起因】

 この期において内需が弱かったのは、基本的には民間最終消費支出(以下、民間消費)の弱さに起因しています。民間消費の実質GDP成長率への寄与度は-0.3%ポイントとなっており、内需の最大の引き下げ要因となっています。これに次いで大きな引き下げ要因となったのが民間在庫変動(以下、民間在庫)で、その寄与度は、-0.2%ポイントとなっています(第3図)。ただ、民間在庫については、むしろ内需の弱さの結果であると考えることもできます(この点については後述します)。そうすると、やはり内需の弱さの主因は、民間消費の落込みにあるということになります。

 民間消費は、大部分が国内家計最終消費支出(以下、家計消費)から成り立っています(これ以外は、居住者家計の海外での直接購入、非居住者家計の国内での直接購入<控除項目>)。そこで、さらにその家計消費の内訳をみると、四つの形態(耐久財、半耐久財、非耐久財、サービス)のうち、非耐久財が実質GDP成長率に対して-0.3%ポイントと、最も大きなマイナス寄与をしています(第4図)。非耐久財には、エネルギー関係が含まれているので、エネルギー価格の上昇、それを受けたエネルギー需要の減少を反映しているものと考えられます。

【外需の強さは内需の弱さの裏返し】

 外需の実質GDP成長率への寄与が大きかったのには、輸出と輸入の両方の動きが影響をしています。輸出が季節調整済前期比で3.2%ポイント増加し、実質GDP成長率に対して0.7%ポイント寄与したのに加えて、輸入が同前期比で4.3%ポイント減少し、実質GDP成長率に対して1.1%ポイントの寄与をしたことが大きく影響しています(前掲第3図)。

 特に目を引くのは、輸入の減少が、今期の実質GDP成長率の70%以上に相当する寄与を示しているということです。これには二つの側面があります。

 第1は、国内最終需要(国内需要から民間在庫を控除したもの)が非常に弱かったということです。このため輸入をする必要がなかったわけです。

 第2は、そのような弱い国内最終需要に対して、今期は民間在庫の取り崩しで対応したところもあったということです。だからこそ民間在庫は減少し、実質GDP成長率に対して-0.2%ポイントの寄与をしたわけです(前掲第3図)。そのため、なおのこと、輸入の必要性はなかったことになります。

【今後の日本経済にとっての明るい材料もある】

 以上で見てきたことを要約すると、2023年4~6月期の実質GDP成長率は予想より高かったものの、その中身を見ると内需は弱く、外需の寄与が大きくプラスであったのも、内需が弱いことを反映しているところがかなりあるということでした。そう考えると、実質GDP成長率が高いにも関わらず、余り積極的な評価はできないということになってしまいます。それでは、日本経済にとって明るい材料はないのでしょうか。

 よく見ると、今後の日本経済の先行きに期待が持たせる明るい材料がいくつか確認できます。

 第1に、実質雇用者所得が増加に転じたことです。季節調整済前期比で、2023年4~6月期は0.6%の増加となりました。増加は、2021年1~3月期以来、9四半期ぶりのことです(第5図)。この背景には、高い賃上げを実現した今年の春闘の影響があると考えられますが、このような伸びが一時的なものに終わるのではなく、持続的に見られるようになれば、民間消費の力強さにもつながっていくものと期待されます。

 第2に、GDPデフレーターが上昇に転じていることです。GDPデフレーターの季節調整済前期比を見ると、3四半期連続の上昇となっています(第6図)。この傾向が続くことになれば、輸入物価の影響を取り除いた、国内要因だけによる物価の変動(ホームメードの部分)にもようやく変化が見られることになります。2023年2月以降、消費者物価指数の食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数が、2%を超えていることと併せ考えると、物価の基調にもようやく変化がみられるようになってきたと考えられます。

 第3に、交易条件の改善です。交易条件は2020年7~9月期以降、9四半期にわたり悪化を続けてきましたが、2022年10~12月期以降、改善に転じています(第7図)。この結果、実質国民総所得(GNI)は、実質GDP成長率を上回る季節調整済前期比で2.6%(年率で10.7%)の増加を示しています。もしこの実質GNIの増加が家計や企業部門の支出行動に影響を及ぼすことになっていけば、内需の成長をもたらす要因になることが期待されます。

 このように、日本経済にとって明るい材料がようやく見えてきました。海外経済を始め、日本経済の先行きを取り巻く環境には不透明感が強く、予断を許しませんが、そうした中で、こうした明るい材料をどのように育て、活かしていくのか。家計と企業の動向、政府の取組みが注目されます。