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山田剛のINSIDE INDIA (第132回)

インドにEV時代到来~大企業、異業種やスタートアップが続々参入

政府の手厚い支援策で購買意欲刺激

 

2022/02/22

世界第5位の自動車大国であるインドに、本格的な電気自動車(EV)の時代が到来しつつある。大気汚染の深刻化などを背景とした環境意識の向上や、原油輸入増加による国際収支の悪化が大きなきっかけだが、車両販売だけでなく充電インフラや関連サービス、自動車ローンといった新たなビジネス創造と雇用拡大、モビリティ改善による民生の向上など様々な効果も期待されている。

現在55~60億ドル程度とみられるインドのEV関連市場だが、RBSAアドバイザリーの予測では政府が乗用車販売の30%をEV化するとした目標の期限である2030年までに年平均90%のペースで拡大を続け、1500億ドル規模に達するとしている。また、HISマルキットはEV乗用車の販売台数が2028年に17.5万台と、20年比で30倍に増加するとの予測を発表している。にわかには信じがたいが、決して大風呂敷というわけではない。

連邦・州政府が積極的にEV普及の旗を振り、税制優遇や補助金など様々な支援措置を打ち出した結果、ユーザーがEVの購入に二の足を踏んでいた要因である車両価格の高さや充電インフラの問題は徐々に改善されている。コロナ禍の余波で厳しい状況が続くインド経済や自動車産業にとって、EVはまさに救世主となりえる。

手厚い購買補助で二輪車の販売急増

インド国内ではすでに、既存大手メーカーはもとより異業種やスタートアップなど260社以上がEV事業に参入。政府の支援制度である電気自動車早期普及・生産促進政策(FAME)の対象となっている企業だけでも50社を数える。特にEV2輪車の場合は部品点数も少なく、バッテリーセルやモーターをほぼ輸入に依存していることもあり、新規参入のハードルは低い。

印電気自動車工業会(SMEV)によると、EV2輪車の国内販売台数は2021年、前年比2.3倍の約23万3千台に到達、21年12月のEV2輪車販売台数は初めて5万台の大台に乗った。ガソリン車約2100万台を販売した2018年度の実績に比べれば1%強に過ぎないが、既存メーカーや新規参入組はともに積極的な生産能力増強投資を行っており、今後4年で販売台数は400~500万台に達すると見られている。これが実現すれば21年の二輪車国内販売実績の3分の1に迫る数字だ。主に庶民の足として都市内移動が多く、充電や電池交換もしやすいEV二輪車はまずEV普及の先駆けとなるだろう。

主要プレーヤーの最新動向を見てみよう。2021年に約4万6200台を販売(シェア34%)し首位に立ったヒーロー・エレクトリック・ビークルズは、22年春をめどに主力のルディアナ工場の生産能力を年500万台と現行の5倍に増強する計画だ。これを追撃するのが2万9800台で2位となった2015年設立のオキナワ・オートテック。創業者が日本・沖縄の風景に魅了されて社名にしたという同社は、今後3~4年で80億~100億ルピーを投資して生産能力を年100万台から200万台に拡張する計画。目下資金調達を巡り内外のPEファンドと協議中という。また、現在約400店を展開する販売店の数を23年3月までに500店に拡大する計画も明らかにしている。

オキナワ・オートテックのテレビCM

3位がエーサー・エナジー(約1万5800台)。2013年設立でインド最大の2輪メーカーであるヒーロー・モトコープが34.8%を出資している。同社は22年1月に42億ルピー追加投資を発表、需要が盛り上がれば年産100万台を目指すと表明した。南部バンガロールやチェンナイなどの大都市で充電ステーション「エーサー・グリッド」の展開にも着手しており、カルナタカ州の配電会社と覚書(MOU)を締結、22年3月までに500か所の開設を目指している。今後は南部タミルナドゥ州・ホスールに第2工場を建設し、年産12万台から40万台へと生産能力を拡張する。

エーサーのテレビCM

EV2輪車のランキング上位には、ガソリンモデルで大きなシェアを握るバジャージ・オートやTVSモーターといった既存二輪車メーカーのほかに、3輪車用エンジンなどを手掛ける自動車部品大手グリーブス・コットン傘下のアンペア・ビークルズ、ピュアEVなどの新興ブランドも名を連ねている。EV2輪車販売台数のうち実に約42%は上位10社以外の中小メーカーが占めている。

これらのほかにも、スズキ・モーターサイクル・インディアは人気スクーター「バーグマン」のEV版を試験投入。ガソリン二輪車第2位で、スクーター販売では首位に立っているホンダ・モーターサイクル・アンド・スクーター・インディア(HMSI)も、ベストセラーモデルである「アクティバ」のEV版投入を検討中。ライドシェアリング大手のオラ・キャブス傘下のオラ・エレクトリック・モビリティも南部タミルナドゥ州に年産200万台のEVスクーター工場の建設計画を発表している。

EV2輪では出遅れ、新興メーカーの後塵を拝してきた名門バジャージ・オートは、スクーターのロングセラーモデル「チェタック」のEV版を発売。22年2月までに販売エリアをデリー、ムンバイ、コチなど計20都市に広げた。予約も納車まで4~8週間待ちという人気だ。

海外勢も高成長が見込めるインドEV市場に注目している。中国のダオEVテックは22年1月に主力機種の「Dao703」を投入。南部アンドラプラデシュ州チットールに工場を建設し、インド国内生産に切り替える予定だ。

動きが急なのはメーカーだけではない。グリーブス・コットンは21年9月、マルチブランドのEVを取り扱う販売店「オートEVマート」の展開に乗り出した。銀行やノンバンクにとっても、EV向け自動車ローンは新たなビジネスチャンスとなる。

タタがけん引するEV4輪車市場

2輪車のペースには及ばないものの、EV4輪も販売台数が大きく増加している。自動車専門メディアautopunditzによると、2021年のEV4輪の販売台数は1万4690台で、前年20年実績の4774台のほぼ3倍。乗用車に占めるEVのシェアは0.5%となった。このうち人気車種「ネクソン EV」や「ティゴールEV」などを擁するタタ自動車が11722台と実に80%のシェアを獲得。これを中国・上海汽車傘下の英MGモーターが2798台で追う構図。韓国・現代自動車やSUV大手マヒンドラ&マヒンドラ(M&M)はまだ大きく水を開けられている。

EV4輪首位のタタは2022年度、EV5万台の生産を目標に掲げている。25年度までにEV10車種を新たに投入する計画で、まずは今後2年でEV販売を最大15万台規模に拡張したい考えだ。子会社のジャガー・ランドローバー(JLR)が持つEVのノウハウもつぎ込む計画。燃料車では日本勢などに押されていたタタはEVで壮大なリベンジを目指す。こうした積極姿勢に着目したカリスマ投資家ラケーシュ・ジュンジュンワーラ氏は昨年以降、タタ自動車の株を相次いで買い増しており、21年末時点での同氏の持ち株比率は1.18%、3925万株(時価で約200億ルピー)に達した。その後タタの株価は2月上旬時点で490ルピー前後で推移しており、20年9月に比べて実に3.3倍に上昇している。カリスマの眼力、おそるべし。

M&Mは2010年に地場電気自動車メーカーのラーバを買収するなどいち早くEVに本格参入するなどEVの草分け的存在だったが、EV3輪以外では苦戦中。そこで今後3年でEVに300億ルピーを投資し、2027年までにXUVシリーズのEV版など16車種を投入する計画だ。

タタ自動車「ネクソンEV」のプロモーション用ビデオ

21年のEV生産台数がわずか121台だった現代は上位メーカー追撃に転じる。2028年までに400億ルピーを投資、2020年台半ばをめどに「イオニク6」、「同7」など世界的に販売好調なグローバルモデルのインド現地生産に乗り出す考えだ。一方、米テスラはインドで輸入EV車の発売を計画しているが、高関税がネックとなっているため目下政府にEV完成車の関税下げを要望している。

そしてガソリンや軽油を使う乗用車で5割近いシェアを維持しているスズキのインド法人マルチ・スズキは今のところ、EVへの本格参入には消極的だ。同社は2019年に主力のワゴンRのEV版を試験販売したが「政府のサポートや充電インフラの整備が追い付かない」として断念。同社のバルガバ会長も最近地元紙に対して「月間1万台程度売れなければ事業化できない」として、EVの市場投入は早くても2025年以降になるとの考えを表明している。

この一方、2033年までに全ラインアップのEV化を目指す独アウディは、すでに21年夏からインド市場に「eトロン」シリーズのEV5車種を投入しているが、完成車に対する高関税を踏まえて目下国内生産を検討中。独メルセデス・ベンツも23年1~3月期をめどにインドでEV車の組み立て開始する方針。同様の動きはボルボやスコダ・オートにも広がっている。

走行範囲が決まっていて、充電などの管理もしやすいバスやタクシー用車両ではEVに大きな優位性がある。タタ自動車はすでに各地のバス会社向けにEVバスの納入を本格化させている。2020年2月、商都ムンバイと内陸の工業都市プネーを結ぶ146キロのバス路線にEV商用車大手ミトラ・モビリティ・ソリューション社製のEVバスが投入され、都市間定期バスでは初めてのEV化となった。同社のバスはフル充電で300キロの走行が可能という。EVバス大手で中国・BYDと技術提携しているオレクトラ・グリーンテックは昨年末、60億ルピーを投入して南部ハイデラバードに年産1万台のEVバス工場を建設すると発表した。

異業種からの参入が多いのもEVならではだ。今後10年で新エネルギー部門に700億ドルを投資する計画を打ち出すなど積極的な事業展開で注目のエネルギー企業アダニ・グループは1月下旬、EV事業への参入を表明。同グループが開発した印西部グジャラート州ムンドラの経済特区(SEZ)内に研究・開発(R&D)拠点を開設する計画。当初は商用車生産を中心に手掛け、EV向けバッテリー生産や充電スタンドの運営も視野に入れている。

充電インフラも一大ビジネスに

EVの普及拡大と連動するように、充電ステーション事業にも大きなビジネスチャンスが見込まれている。連邦政府や国営エナジー・エフィシエンシー・サービシズ(EESL)などは、21年末時点で有料高速道路や幹線国道などに計約4400カ所の充電ステーションを開設している。またインド国営の石油販売3社は、自社のガソリンスタンドに充電ステーションを併設するビジネスモデルを推進中だ。最大手の国営インド石油(IOC)は今後3年でムンバイ、バンガロール、デリーなどに1万カ所の充電ステーションを開設する計画を明らかにしている。IOCは2月中旬までに早速1000カ所の充電ステーションを開設した。同様に国営バーラト石油(BPCL)も5年で7000カ所、同ヒンドスタン石油(HPCL)も5000カ所を計画しており、3社の合計では2万2000カ所に達する。今後EVの普及でじり貧が予想され、民営化や経営統合では真っ先に名前が挙がる国営石油会社だけに、EV関連事業へのシフトは迅速だ。

民間では国内200都市で1000カ所の充電ステーションを運営しているタタ電力が大手タイヤメーカー、アポロ・タイヤと提携し、同社のタイヤ販売店内に充電ステーションを開設する方針。充電設備は乗用車向けだけでなく商用車やバスにも対応しており、一般にも開放する、としている。

EVメーカー各社も独自の充電インフラの構築を進めている。州政府の設置分なども含めると、インド国内の充電ステーションはすでに1万カ所を超えているとみられる。2020年7月時点でわずか933カ所、21年3月でも1800カ所程度だったことを考えると、充電ステーションの整備は相当なスピードで進んでいることがわかる。しかし、当面の節目となる「2026年までにEV200万台」という目標を達成するためには最低でも40万か所の充電ステーションが必要、との試算があり、長い道のりであることに変わりはない。

EVの性能や使い勝手を左右するバッテリーはビジネスとして十分成立する。特に2輪車・3輪車、デリバリー用軽貨物車などでは充電するよりもスタンドなどでバッテリーを交換した方が効率的に運用できる。ホンダは21年12月、バッテリー・シェアリング会社「ホンダ・パワーパック・エナジー・インディア」を設立、まずバンガロールでEVオートリキシャ(3輪タクシー)向けバッテリー交換ステーションを展開する。大手財閥リライアンス・グループはM&Mと提携して交換式バッテリーの販売事業に進出。ヒーロー・エレクトリックは、EVスタートアップのスパレイト社と提携、バッテリー充電ステーションの展開を目指す。同社は台湾のEV大手ゴゴロと組んでバッテリー交換スタンドの運営にも進出する考えだ。

バッテリーの価格はEV車両本体の40~50%を占める重要なコンポーネントで、コスト削減が普及拡大のカギを握る。リチウム・イオン電池はかつて1Kwhあたりの製造コストが1000ドルを超えていたがいまや150ドル前後にまで低下している。これが同100ドルを切るようになるとがぜん普及に弾みがつく可能性があり、技術開発の競争も活発化している。原油価格高騰もEVにとっては大きな追い風だ。こうした中リライアンスは1月、ナトリウム・イオン電池の技術を持つ英バッテリーメーカーのファラディオンを買収した。リチウム・イオン電池に比べてまだ性能は劣るが、レアメタルなどの希少資源に依存しない安価なナトリウム・イオン電池の開発が軌道に乗れば、コスト削減の決定打となり得る。

内外の投資家もインドのEV市場に注目している。インドの有力ベンチャー・キャピタルであるストライド・ベンチャーズは1月末、地元経済紙に対し今後3~6か月でEVスタートアップに10億ルピーを投資する方針を明らかにした。同じ1月下旬、オラは米テクネ・プライベート・ベンチャーズやアルパイン・オポチュニティ・ファンド、印金融大手エーデルワイス・グループなどから2億ドルを調達した。同社は21年9月も同様にファルコン・エッジ・キャピタルやソフトバンクから2億ドルを調達している。また、気候変動対策を投資戦略と位置付けるファンド「TPGライズ・クライメート」とアラブ首長国連邦(UAE)・アブダビの投資ファンド「ADQ」は21年10月、EVを手掛けるタタ自動車の子会社に今後5年で10億ドルを投資する計画を明らかにしている。

メニュー豊富なEV振興策

インド政府は2030年までに自家用乗用車の30%、商用車の70%、そして2輪の80%をEV化する目標を掲げている。この目標に向かって業界を支援する最大の政策が、電気自動車普及・生産促進政策(FAME)だ。FAMEⅠは2015年に始まり、2019年にはこれを引き継いだFAMEⅡがスタートしている。「Ⅱ」の補助金額合計は1000億ルピーで、このうち86%が購入補助に、10%が充電ステーション整備事業に交付される。FAMEⅡは22年3月で終了する予定だったが、EV販売台数が目標に達していないこともあり24年3月まで2年間延長された。

FAMEⅡでは、バッテリー容量1Kwh当たり1万ルピー(商用車の場合2万ルピー)の購入補助金が支給される。しかも、21年6月からはEV2輪車に限って同1万5000ルピーに引き上げられ、上限も車両価格の20%から40%に改定された。21年11月時点で、EV16万5000台がFAMEによる助成対象となっている。

マハラシュトラ、オディーシャ、アッサムなど各州政府もそれぞれ独自の補助金や道路税の減免などの支援策を導入している。21年末時点で国内17州が何らかのEV優遇政策を実施しており、5州が検討中としている。

右派政党シブ・セナが政権を握るマハラシュトラ州政府アディティヤ・タクリー観光・環境相は1月下旬、連邦政府財務省に対しEVメーカーに対する輸入関税減免を要請した。燃料車の場合、消費税に相当する物品・サービス税(GST)が完成車・ノックダウンともに約50%であるのに対し、EVのGST税率は5%に抑えられている。しかも州によっては登録税や道路税が免除される。だが、完成車輸入の場合関税は最大で110%、ノックダウンでも同30%となっていて燃料車と同等の扱いとなっている。

そしてインド重工業省は2月11日、一定額の投資を条件に生産高に応じて補助金を支給するPLI(生産連動型優遇スキーム)の自動車部門で20社の申請を採択した。完成車の場合はEVと燃料電池車(FCV)が対象となる。採択されたのは現代自動車や起亜自動車、マヒンドラ&マヒンドラ、スズキ・モーター・グジャラート(マルチ・スズキとは別会社で、日本のスズキ100%出資子会社)など4輪完成車メーカー10社と、バジャージ・オート、ヒーロー・モトコープなど2輪・3輪メーカー4社、そしてアクシス・クリーンモビリティやオラ・エレクトリック・テクノロジーズなど異業種から参入する6社。

20社の中には、業績不振のため昨年インド市場からの段階的撤退を表明したフォード・インディアが名を連ねている。EVを引っ提げてインド市場に「再参入」するフォードの戦略も大いに気になるところだ。これに今後採択企業が発表される自動車部品メーカーも含め、2026年度までの5年間で総額2593.8億ルピー(約4000億円)の補助金が支給される。対象となったメーカーには完成車の場合、売上高増加分の最大18%が補助金となる。PLIは過去にモディ政権が打ち出してきた産業政策の中でも、群を抜いた好評を得ている。

ガソリン車との価格差大きく縮小

こうした補助金によって、EVの価格はユーザーにとってかなり魅力的になってきている。EV2輪の人気車種であるエーサーのスクーター「450X」(フル充電で117キロ走行可能、最高時速78キロ、バッテリー容量2.9Kwh)の場合、デリーでの諸費用、消費税に相当するGST込みの価格は約13万8000ルピー(約21万円)。これにバッテリー容量1Kwh当たり15000ルピー、同機種の場合総額43500ルピーの補助金が出るので、ユーザーが実際に支払うのは9万4500ルピーとなる。この価格はガソリンで走るホンダの人気スクーター「アクティバ」の標準モデル(7万~7.2万ルピー)と比べても極端に割高ではない。また、売れ筋の100~150cc前後のバイクの場合、ガソリン車のGST税率が28%であるのに対しEVは5%なので、ユーザーにとって税の差額分は「お買い得」ということになる。

EV2輪車の場合、走行距離当たりの「燃料費」はガソリンの7分の1以下。インドではツーリングなどでバイクに乗って長距離移動する人はまだ多くなく、大部分が都市内移動なので充電スタンドさえ普及すれば販売台数は一気に拡大する余地がある。4輪車では、タタの人気車種ネクソンEVのベーシックモデル「XM」(走行可能距離312キロ、最高時速80キロ、バッテリー容量30.2Kwh)のケースで補助金30.2万ルピーを差し引いた諸費用込み価格(ムンバイ)は約119万ルピー(182万円)。同モデルのガソリン仕様は約87万ルピー(133万円)。タタ自動車によると、年間1万5000キロ走行すると仮定した場合、ネクソンEVの年間のオーナーシップコストはガソリン車の約6分の1。こうしたデータもEV購買意欲を十分に刺激する材料といえるだろう。

こうした政府の取り組みやEVへの認知度向上、多くのメーカーの参入によって、「車両価格が高い」「充電ステーションが近くにない」「機種の選択肢が少ない」といった問題点は徐々に解消されている。ただ、解決すべき問題点がないわけではない。スムーズな買い替えサイクルを形成するには健全な中古車市場が不可欠だが、EVの場合車両の損耗と償却の経験値が少ないためリセールバリューの算定が難しい。充電装置の規格統一や安全基準の確立なども課題となってくる。そして、特に二輪車市場ではこのままだと2026年前後に生産能力が3000万台を超え、一気に供給過剰となる可能性が指摘されている。民間航空や携帯電話でも見られたように、インドでは新しい商品やサービスが登場すると多くの企業が飛びつき、利益なき過当競争に陥ってしまうことが繰り返されてきた。政策支援はもちろん、メーカーやユーザーの動向は今後もじっくり見守る必要がありそうだ。

*第100回(2018.5.11)までのバックナンバーはこちら

「低価格の小型車が中心で停電も多いインドでは、電気自動車なんてまだ早いーー」。数年前まではこれがEV市場への評価でした。ところが、環境問題がクローズアップされ、原油価格の高騰もあって一躍電気自動車はインド期待のニュービジネスとして急浮上しています。FAMEやPLIといった製造業振興策も珍しく当たり、EVはまさにインド産業界のゲームチェンジャーになろうとしています。電池やモーターなど重要部品の国産化や充電インフラの整備、バッテリーのリサイクルなど未解決の問題はありますが、何とか乗り切って行けるでしょう。問題は補助金や優遇措置がなくなったあとにEV市場が独り立ちできるかどうか。今後1~2年である程度の結果は出そうです。(主任研究員 山田剛)