国内の国債消化余力を示す指標として、家計と企業の民間金融資産残高に注目し、それが政府債務をどの程度上回っているかを「国内資金余剰」と名付ける。同余剰がある水準を下回ると、投資家が財政破綻リスクに対するプレミアム(上乗せ金利)を要求するようになると考え、25カ国のパネルエータを用い、Threshold Regression(閾値回帰分析)という手法により長期金利の関数を推計した。
それによると、同余剰がおよそ105%(GDP比)を切ると、政府債務に対する長期金利の反応係数が格段に大きくなる。日本は債務が大きいだけに、ひとたび破綻リスクが意識されると、10年国債利回りは10%に達する。その時の国債の海外保有比率は、約2~3割と見込まれる。
同余剰が105%(GDP比)を切るのは、先行きの成長率を悲観的にみると2018年、楽観的にみると2028年である。同楽観見通しは、政府の「慎重」シナリオに相当する。高い名目成長率を前提とした財政見通しは、危機への認識を遠ざける。悲観ケースが続いても、消費税を16-20年度の間に毎年2%ずつ引き上げれば、これまで通り国内だけで国債を消化でき、財政危機を避けることが出来る。「消費税10%」以降の議論が必要である。
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