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日本経済の再設計 震災を越えて 避けられるのか財政破綻

破綻リスク膨らめば国債金利10%も

-海外保有比率高まり18年から28年にも-

 

2012/10/02

 我が国は世界一の政府債務を抱えているにもかかわらず、財政危機の兆しは全くなく、長期金利は低位で安定している。この背景には家計の豊富な金融資産が、金融機関を通じて国際の消化を下支えしてきたことがある。政府債務の規模に比べ国内の資金供給が少ないギリシャやスペインとはこの点で大きく異なる。しかし、日本の政府債務が今後も膨らみ続ければ、国内消化にもいずれ限界が訪れ、ギリシャやスペインと同様の事態になる可能性もある。その場合、日本の国債金利はどの程度上昇するのだろうか。
 国内の国債消化余力を示す指標として、家計と企業の民間金融資産残高に注目し、それが政府債務をどの程度上回っているかを「国内資金余剰」と名付ける。同余剰がある水準を下回ると、投資家が財政破綻リスクに対するプレミアム(上乗せ金利)を要求するようになると考え、25カ国のパネルエータを用い、Threshold Regression(閾値回帰分析)という手法により長期金利の関数を推計した。
 それによると、同余剰がおよそ105%(GDP比)を切ると、政府債務に対する長期金利の反応係数が格段に大きくなる。日本は債務が大きいだけに、ひとたび破綻リスクが意識されると、10年国債利回りは10%に達する。その時の国債の海外保有比率は、約2~3割と見込まれる。
 同余剰が105%(GDP比)を切るのは、先行きの成長率を悲観的にみると2018年、楽観的にみると2028年である。同楽観見通しは、政府の「慎重」シナリオに相当する。高い名目成長率を前提とした財政見通しは、危機への認識を遠ざける。悲観ケースが続いても、消費税を16-20年度の間に毎年2%ずつ引き上げれば、これまで通り国内だけで国債を消化でき、財政危機を避けることが出来る。「消費税10%」以降の議論が必要である。

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