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情報通信技術が変える経済社会 情報通信技術が変える経済社会「2015年度報告」

“第4次産業革命”への備えを

-ICT戦略と国家戦略・経営戦略の深い統合を

 

2016/03/23

高口 鉄平、実積 寿也、高地 圭輔、宮﨑 孝史、柳谷 昭夫

 日本経済研究センターでは「2050年への構想」関連の研究活動の一環として「情報通信技術が変える経済社会研究会」を2014年10月から開催しており、この「論点」は2015年2月に公表した「経済社会の革命的変化への岐路に立つ日本-技術進歩と向き合う改革への覚悟を-」に続き、研究会での議論を取りまとめるものである。
 第1章では、高付加価値を生み出している企業のICT利活用の「中身」について、研究会の一環として取り組んだ分析の結果を報告する。分析は、平成23~26年に実施された「通信利用動向調査―企業編―」の個票データを使用し、九州大学の実積寿也教授、静岡大学の高口鉄平准教授及び総務省情報通信政策研究所と実施した。分析の結果、「業務のため」のシステムにとどまらず、「お客様のため」にICTサービスを駆使することの重要性を示唆する結果が得られた。米国企業のように企業戦略とICT戦略を統合し、稼ぐためのICT利活用に取り組む必要がある。
 第2章では、経済・産業が、「第4次産業革命」とも呼ぶべきIoT、ビッグデータ、AIなどによる変革でどう変わっていくのかについて、研究会での議論を基礎としてICT産業・非ICT産業に大別して分析した。特に、インダストリー4.0、さらにはシェアリングエコノミー、ブロックチェーンなどは従来の企業や経済のあり方、さらには人間の価値観に極めて大きな影響を及ぼす可能性がある。既存事業の見直しに加え、規制の改革など政策的な対応が急務だ。
 第3章では、ICTによる経済社会の変革に積極的に対応するために官民は何をすべきか、必要な政策を提言する。ICTがもたらす変革は不可避であり、ICT戦略と企業戦略の統合に加え、ICT戦略と国家戦略を深いレベルで統合し、政策を展開する必要がある。政府はキャッシュレス経済化など野心的なテーマに取り組むことを通じ、ユニコーン企業を生み出す環境整備等に取り組むべきだ。また、今後、ICTの普及によって、所有から利用へと豊かさの概念が揺らぎ、GDPを補完する「ビヨンドGDP指標」などが求められるだろう。

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