首都圏、京阪神、愛知、福岡県など11都府県にコロナウイルスの感染爆発による医療崩壊を防ぐため、政府は1月上旬に緊急事態宣言を発出した。テレワーク7割、20時以降の外出自粛、飲食店への営業時間短縮の要請が主な対策だ。宣言の効果は表れつつあるが、どのタイミングで宣言を解除するべきか、経済影響の観点から試算した。
医療の逼迫度合いを大きく緩和できるステージⅡ水準まで感染を収束させて宣言を解除(ステージⅢ解除に比べ約2週間延長、解除は3月7日)すると消費は秋まで回復軌道を維持でき、経済的にも恩恵をもたらす。東京五輪も何らかの形で開催できる可能性が高まる。一方、ステージⅢ段階で解除すると当初の消費の落ち込みは小さいが、21年半ばに再び感染が拡大、夏に3回目の緊急事態宣言に追い込まれ、消費も失速する懸念がある。治療薬もなく、ワクチン接種の見通しも不透明な現局面は“With Corona” ではなく “Without Corona” を優先する時だろう。
図表 ステージⅡまで感染抑制した方が経済の落ち込みは小さい
(注) シナリオ1は感染レベルをステージⅢ(東京都なら1週間の新規感染者数の平均が500人)、シナリオ2はステージⅡ(同100人)で緊急事態宣言を解除。人流から消費水準を推計。緊急事態宣言解除後の人流は2020年5月の緊急事態宣言解除と同様の流れになると仮定した。
(資料) 内閣府「四半期別GDP速報」、日本経済研究センター「改訂第184回四半期経済予測」
本提言は、主任研究員:小林辰男、副主任研究員:高野哲彰、梶田脩斗、理事長・岩田一政が執筆した。
※英文版「The Impact of the State of Emergency on the Japanese Economy」はこちら
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